「しばらくはAV新法を守らない」アダルトビデオの個人撮影被害対策進まぬ背景に「自己責任」論も
https://news.yahoo.co.jp/articles/55016be2327f80b80134bcafbcc41b3d733b6d92

アダルトビデオ(AV)出演による被害を防ぎ、救済する新法が6月に成立、施行された。AV業界は施行前後から研修などの対応に追われ、一部からは「撮影が中止や延期になった」など、萎縮や様子見とも取れる動きも出ている。一方で「新法を守っていないのでは」と懸念されているのが、一般人が撮影するAV、「個人撮影」や「同人AV」と呼ばれるものだ。

スマートフォンの普及により、制作者と出演者のマッチングや動画撮影が簡単になった結果、誰もが撮影から出演、配信までできるようになった。AVメーカーや事務所を介さず、作品が審査されないといった特徴があり、契約書を介さないなど新法の規制を無視するかのような行為が指摘されるほか、トラブルも多く、撮影された人が脅迫や性暴力に遭ったという相談が支援団体に寄せられている。

個人撮影も、もちろんAV新法の規制対象だ。しかし、被害者に対する根強い「自己責任論」から、深刻な被害と捉えられず、対策は進んでいない。実際に個人撮影する男性と、性行為はないもののヌードモデルとして「出演」した女性に現状を聞いた。(共同通信=池上いぶき、川南有希)
▽綿密にやりとりして撮影。それでも「女性を犠牲にしている」感覚

AV被害救済法が可決、成立した参院本会議=6月

首都圏に住む30代のさとしさん=仮名=は個人撮影をしている。約1年前からツイッターなどで女性を募集。性行為を撮影し、作品を動画サイトで販売する。「月に数本作って100万円稼いでいる」

「素人感」を出した方が売れるため、募集対象は出演経験が少ない人に限っている。応募してきた女性には、初めての撮影か、顔を写せるかなどの条件に応じ、10万円前後の報酬を渡す。基本的に避妊はせず、女性との親密感を演出して稼ぎを伸ばす。

女性たちの大半は学費稼ぎなど金銭目的という。トラブル防止のため、性交回数や撮影時間などを記した同意書と併せ、周囲に知られるリスクを事前に説明する。過去に撮影した数十人のうち、3人が知人らに気付かれたという。

AV新法は、契約から撮影まで1カ月空け、撮影後4カ月は公表を禁止した。しかし、さとしさんはこの規定を守れないという。撮影時に女性に報酬を支払ったとすると映像公表まで4カ月間、収入が得られくなり、生活に困るためだ。