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命と向き合うとは 猟師が「命の授業」
イノシシやシカなどを捕獲、解体してジビエ(野生鳥獣の食肉)として販売まで手がける猟師による「命の授業」が9月28日、県立中央農業高校(富山市東福沢)であった。狩猟を通じて知った「命」について、自分たちで考えたり感じたりすることの大切さを生徒たちに語った。
「命とはこういうものだとすらすら大きな声でしゃべれる人は信用しない。命とはそんなに簡単に語れるものではない」
講師は富山市八尾町でジビエ処理施設「大長谷ハンターズジビエ」を営む猟師の石黒木太郎(もくたろう)さん(30)。23歳で狩猟免許をとり、県南部の大長谷地区という山あいで暮らしながら、シカやイノシシ、クマをとり、その肉を飲食店に卸して生計を立てている。
授業では、冬は豪雪のなかに立つ処理施設や四季の山々、クマやイノシシの肉など山での暮らしの風景を写真で紹介。「春は山菜採り、夏は川で魚をとる。その繰り返しのなかの一つの行為が狩猟。全体にいろいろつながりあっていることを認識してほしい」
石黒さんは様々な物事の感じ方について、「有名な景色だと感動するが、心のありようによっては身近な景色もきれいだなと思う」と話し、「心のありよう次第」と何度も語りかけた。 狩猟で動物たちの命と向き合う気持ちについて、「私たちの生命を維持していくうえで、他の命を奪わずして生きていくことができない現実がある。命を大切にしようとか、いただきますと言うのは、自分が受け止めきれない何かと向き合うための行動ではないのかと思う」と述べ、「『おいしくしてやるからな』という思いで命と向き合う。そうじゃないと自分の気持ちがやりきれない」と話した。
「命の授業」は地域資源を活用したジビエの振興につなげようと県が昨年から始めた。今年は同校2年の約20人が受講した。作物科学コースの柏吏琥さん(16)は「一つ一つの命を大切にして調理していきたい」。食品加工コースの作田美幸さん(17)は「大変な思いで動物をとっていることを知った。ジビエはくせが強いというイメージがあったが、そういう偏見をなくしていければ」と話していた