数学の超難問「ABC予想」を証明したとする京都大数理解析研究所の望月新一教授の論文が、今年3月に出版された。

「謎に包まれた数学の論争は、ネットフリックスのドラマをほうふつとさせる展開だ」

仏紙は3月、論文への批判や審査の不備への指摘など紆余曲折を経て出版された経緯をこう表現した。
英BBCも「不可解な証明を巡る論争」と題した記事で、「ほとんどの数学者は証明が失敗したと考え、理解することをあきらめた」とする学界の声を伝えた。

昨年4月、論文が投稿された数理研発行の数学誌「PRIMS(ピーリムス)」の編集委員会は論文の正しさを確かめる「査読」が終了したと宣言。

それでも、懐疑的な見方は消えていない。
英科学誌ネイチャーは「不可解な論文が公式に出版されることに衝撃を受けた。ABC予想の『証明』は物議を醸したままだ」と論評した。

望月氏がPRIMSの編集委員長だったことから、審査方法への疑問もくすぶり続けている。
ABC予想を提唱したジョゼフ・オステルレ仏ソルボンヌ大名誉教授は「重要な論文が望月氏に近い雑誌で審査されたのは驚きだ」。
フィールズ賞受賞者のピーター・ショルツ独ボン大教授も「証明の疑問点は明らかなのに出版された論文でも解消できていない。納得できる説明をしてほしい」などと述べた。

https://www.asahi.com/articles/ASP7V4TC2P7RULBJ008.html