プロサッカー選手の本田氏が、投資家としての活動を始めたのは2016年のこと。米国を拠点に投資運用の領域でキャリアを積んできた中西武士氏と共に、自身の名前である「圭佑」を“KSK”と略し、その名を冠した投資ファンド「KSK Angel Fund」を立ち上げた。

同ファンドは、2019年12月に東証グロース市場(当時は東証マザーズ)に上場したMakuakeのほか、電動キックボードのLuup、SPACを通じてNASDAQ市場へ上場することを発表した“空飛ぶバイク”のA.L.I. Technologies、そして先日東証グロース市場に上場した英語コーチングサービスのプログリットなどに投資を実行してきた。

KSK Angel Fundの投資先は主に日本や東南アジアのスタートアップだ。さらに本田氏は2018年、今度は“米国の有望スタートアップへの投資”を目的に、俳優のウィル・スミス氏と共同で投資ファンド「Dreamers Fund(ドリーマーズ・ファンド)」を立ち上げた。

Dreamers Fundは、イーロン・マスク氏が設立したブレイン・マシン・インターフェースを開発するNeuralink、音声SNSアプリのClubhouseやオンライン決済サービスのBolt、ブロックチェーン・NFTサービスのDapper Labsなど合計97社に投資を実行。立ち上げからの4年間で、すでに投資先の中から9社のユニコーン、2社のデカコーンが生まれている。

スタートアップへの投資を始めてから約6年間で2社が上場し、9社のユニコーン、2社のデカコーンが誕生──。ここまでの実績を見ると、本田氏はスタートアップへの投資で大きな成果をあげていると言ってもいいだろう。本田氏自身も「KSK Angel FundやDreamers Fundを通じて、自分やウィルが持つ影響力を使ってスタートアップに投資することの成果はそれなりに出せた、という自負はあります」と語る。一方で、課題も見えたという。

「今までの投資活動ではどうやって(スタートアップ業界の)インナーサークルに入り込むかにフォーカスしてきたんです。例えばDreamers Fundがそうですが、投資案件のほとんどは米国トップティアのVCから共有してもらっていました。それこそ、ウィルのおかげでいろんな投資案件に入らせてもらって、彼にはとても感謝しています」

「その一方で、投資の“入り口”の部分にフォーカスしていた分、投資後のサポートという“出口”の部分にはタッチできていなかった。もともとの戦略自体に組み込まれていなかったこともあるのですが、6年間の活動を踏まえて、今後の僕らの挑戦としては投資した後も会社がスケールしていくためのサポートをしていく、ということになると思っていました」(本田氏)

本田氏の“右腕”として、KSK Angel FundとDreamers Fundでパートナーとして投資の実務面などを担当してきた中西武士氏は、こう続ける。

「セレブリティなど海外の著名人と共同で投資ファンドを運用することで、トップティアだけしか知らない良い投資案件が入ってきますし、機関投資家から資金も調達できる。それはDreamers Fundの運用を通して証明できました」

「ただ、アメリカでは自分たちと同じような動きをしているところはあり、今後もDreamers Fundと同じようなことをやっているだけでは競争に負けてしまう。では、どんなことをしていけばいいのか。今後、世の中が向かっていく方向性から逆算して生まれたアイデアがXPV Circle Fundでした」(中西氏)

https://signal.diamond.jp/articles/-/1460