コロナ禍でも落ちない鶏肉人気 外食産業向けの地鶏は苦境続く?

 コロナ禍で、外食産業向けが多い地鶏が苦しんでいる。

 秋田県畜産振興課によると、県のブランド鶏「比内(ひない)地鶏」の出荷羽数は2019年には約51万5千羽だったが、コロナ禍が始まった20年は約49万5千羽、翌年は約42万6千羽に減った。需要の約6割が外食産業で、出荷数の3分の2が首都圏向けだったという。県は通販など新たな販路の開拓を支援している。

 徳島県の「阿波尾鶏」も、19年度まで出荷羽数は200万羽前後で推移してきた。だが、20年度には約167万3千羽、21年度には約160万3千羽まで減った。こちらも都市部の外食産業向けの出荷比率が高く、県畜産振興課の担当者はアフターコロナについて「これまでの水準にはならないだろう」とみている。

 愛知県が誇る名古屋コーチンも年間の出荷羽数は19年は約99万8千羽だったが、21年度には約89万7千羽に落ちた。

 だが、健康志向の高まりを受け、コロナ禍でも鶏肉の人気は落ちていない。支えるのは、消費量の大半を占めるブロイラーだ。

 農林水産省の統計によると、鶏肉の消費量はコロナ禍以降も年間250万トンを超え、2021年はこの10年で最高の約260万トンとなった。消費量の9割以上は、大量生産されるブロイラーという品種が占めている。

 コロナ下で外食を控える動きが強まり、飲食店などの需要が高い地鶏は苦境に陥った。その一方で、自炊の「巣ごもり需要」や唐揚げのテイクアウトといった「中食需要」は逆に増え、ブロイラーの引き合いは高まった。

 新型コロナウイルスの水際対策が10月11日に緩和された。国の「全国旅行支援」も始まり、外出の機会が大幅に増えることが想定される。アフターコロナを見据え、飲食店の期待は高まる一方、ライフスタイルの変化によって、地鶏の需要回復の先行きは不透明だ。

 農家や加工販売会社、飲食店などで組織する名古屋コーチン協会(名古屋市中区)の木野勝敏事務局長は「全国のみなさんに名古屋コーチンのことをもっと知ってもらい、ぜひ食べてもらいたい」と話す。
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