お子さんが行方不明になったときに法執行機関に提供する必要がある場合に備えて、子供たちのDNAと指紋を保存しておきましょう──そんな推奨の言葉とともに、テキサス州内の学校が保護者にDNAキットを配布している。
だが、同州のユバルディの小学校で銃乱射事件が起こり、生徒19人が犠牲になってから半年も経たないなかでDNAキットが配布され始めたことに、動揺を隠せない親は多い。そのDNAは学校で銃乱射事件が起きたときの遺体の身元確認のためではないか、と思わずにいられないからだ。
サンアントニオ市の中学校のある教師は言う。「行方不明という言葉はいろいろな解釈ができますからね」
5月にユバルディのロブ小学校で起きた銃乱射事件の後、子供の安全を確認できていない親たちがDNAサンプルを提供するために列を成したのは記憶に新しい。銃弾で引き裂かれた遺体のDNAと照合するためだ。
18歳の犯人は、半自動ライフル2丁と約400発の弾薬を合法的に購入して、ロブ小学校の生徒19人と教師2人を殺害。テキサス州史上最悪の学校襲撃事件となった。
無料のDNAキットには、学校の銃乱射事件との関係は明示されていない。サンアントニオの中学校で9月に生徒たちに配布されたキットには、こんな文言がプリントされていた。
「これは安全のための贈り物。毎年80万人以上の子供が行方不明になっており、それは40秒に1人の割合です」
しかし、このキットは銃乱射事件と関係があると捉えた一部の親や教師、銃規制支持派は、州当局は惨劇が起きた際の「身元確認に備える」のではなく、「銃規制や学校警備の強化」に力を入れるべきだと怒りの声を上げている。
銃規制を求める母親たちの団体を創設したシャノン・ワッツはこうツイートした。
「テキサス州のグレッグ・アボット知事は、銃規制法を成立させて子供たちの命を守ろうとするよりも、子供たちが“殺された後”に親が遺体の身元確認をできるようにとDNAキットを配布している」
テキサス州教育庁によると、DNAキットは学区を通じて各家庭に配布されている。実際にキットを使うかどうかは任意だ。
使うと決めた親はキットで子供の指紋とDNAを採取後、自宅で保管しておき、緊急事態が起きた際に法執行機関に提出することになっている。
https://courrier.jp/cj/304641/