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「デート感覚で内見できる」新感覚の不動産業「ガールズ賃貸」とは

コンビニの店舗数よりも事業者数が多いと言われる不動産業。そんな激戦業界にこの秋、「女の子とデート感覚で内見ができる」という新戦略で挑む不動産仲介業者が誕生し、注目を集めている。’22年9月下旬に正式リリースされた不動産賃貸仲介サービス「girls賃貸」だ。
girls賃貸の利用者は、ZOOM等のオンライン会議アプリで希望する物件の打ち合わせをしたのち、指名した女性スタッフとともに候補の物件を内見して賃貸住宅を選ぶことができる。実際に利用したTさん(40代男性)に話を聞いた。

「TikTokで、girls賃貸のスタッフの女の子がルームツアーをしている動画が表示されてこのサービスを知りました。せっかく内見するならかわいい女の子と一緒がいいなと思ったので利用してみた次第です。

新宿近辺で探していたので、新宿西口で待ち合わせて3件内見しました。会うまでは緊張していたのですが、『今の物件、どうでした?』みたいな会話で感想を話したり、内見中は『テレビはどこに置きますかね?』『この間取りなら、ここにベッドで、ここに机かな?』と自然と会話が弾む感じで、色々とシミュレーションしながら物件を決めることができました」

girls賃貸の戦略は「物件ではなく、案内をする『人』で付加価値を提供する」というものだ。この戦略が成り立つ背景には、賃貸仲介業者が使用する不動産情報ネットワーク「レインズ」の仕組みが関係している。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が次のように解説する。

「レインズは、不動産業者全員が利用できる、物件情報を共有しているネットワークです。ほとんどの不動産業者はレインズに登録されている物件から紹介をするため、どこの不動産業者に行っても紹介される物件が大きく変わることはありません。賃貸仲介サービスは、紹介する物件での差別化が難しい業界なのです」

百聞は一見に如かず。弊誌記者もgirls賃貸のスタッフとの内見を体験してみた。案内されたのは品川駅から徒歩10分、スカイラウンジも利用できる高層マンションだった。部屋に入ると、「収納はちょっと狭いかもしれませんね」「鏡が大きいので身支度がしやすく、女性としてはうれしいかもしれません」など、女性目線を含めたアドバイスをしてくれた。

案内してくれたgirls賃貸のスタッフ・ひなさんに話を聞いた。

「元は歯科衛生士をしていました。不動産の知識は素人だったのですが、3回の研修で内見に必要な知識は学ぶことができました。お客さまとコミュニケーションを取って、満足のいく部屋さがしをしてもらえた時がこの仕事をしていて一番嬉しいです。

お客さまと2人きりになるのが危ないんじゃないか、と心配されたこともありますが、防犯グッズを会社が持たせてくれていますし、内見が一件終わるたびに本社スタッフに連絡をしているので、不安を感じることなく仕事に取り組めています!」

girls賃貸はSNSを中心に反響を呼び、開始から1か月で60件を上回る成約を達成している。しかし一方で、「ネットでの3D内見、契約・重要事項のオンライン説明とフルリモートが可能な賃貸は、できるだけコストを掛けないで成約するのが理想。内見は最も人件費がかかるのに、それを売りにして経営が成り立つのか」という業界内の厳しい見方もある。girls賃貸の運営会社・株式会社Xst(クロスト)の田山賢伍代表取締役が語る。

「広告費の削減がgirls賃貸の武器の1つになると思っています。女の子各自がTikTokやインスタグラムにルームツアー動画を投稿し、それを見たお客様に利用していただく狙いです。実際、これだけの反響を得るのは、普通の不動産屋だったら難しかったと思います。もちろん、物件を紹介する『人』が最大の武器なので、そこでも差別化していきたいですね」

女の子とのデートが目的で、物件を探すつもりがない人の内見を防ぐため、事前の打ち合わせ時に身分証の提示を求めるなどの工夫もしているという。

正式リリースから約1か月。新発想のgirls賃貸は、入れ替わりの激しい不動産業界の風雲児となるのか