千葉・木更津産カキ出荷へ 新ブランド「月夜牡蠣」に期待

千葉県木更津市牛込の沖合で平成30年に始まったカキの養殖が軌道に乗り、10日から本格的な出荷が始まる。干潟での生育により、カキ本来の味わいを引き出したのが特徴で、販売に合わせて「月夜牡蠣(つきよかき)」と命名。当面は同市への「ふるさと納税」の返礼品を除けば同市内での流通が中心だが、都心への販路拡大も視野に入れており、新たな房総ブランドの〝江戸前カキ〟に期待が高まっている。

養殖事業を行っている新木更津市漁業協同組合によると、来春ごろまでの生産量は約2万5000個を想定。重さでは2・5トン程度で、試験的に生産した昨シーズンの約700キロの3倍以上となる。同漁協は令和5年に漁業権の取得を目指す。

付近で採取した稚貝から育てた完全な江戸前のカキで、卸値は1キロ約1500円。小売価格が1個300円程度だった昨年は、ふるさと納税の返礼品として人気で「一瞬で品切れとなった」(関係者)という。

同市沖は小櫃川が運んできた土砂によって形成された「盤洲(ばんず)干潟」が広がり、干満差は約2メートルに達する。カキ本来の生育環境に近く、潮の満ち引きの中での〝筋トレ〟が、口にしたときの歯応えや濃厚な味わいにつながるとされる。

月の引力による潮の満ち引きで育つことから月夜牡蠣と名付けられた。国産カキの産地は広島、宮城両県が有名だが、いずれも干満差が少ない海域で育てられている。木更津産は、より天然のカキに近いという。

養殖では、クロダイなどの天敵からカキを守るため、干満の差にも耐えるオーストラリア製の専用かごを使用。漁協関係者は「将来はこうした道具も国産を使いたい」と話す。

同漁協がカキの養殖に取り組んだ背景には、アサリの不漁や漁師の高齢化がある。同漁協牛込支所の千手清晴支所長は「カキを漁師の新たな収入源に育て、本市の伝統ある漁業を守りたい」と意気込む。

市によるふるさと納税の受け付けは12月上旬開始を予定。また、同漁協は流通拡大に向け、新規の取り扱い先を募集している。

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