――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) 気絶しかけました。

――気絶っ!?

純士 はい。これまでいろんな映画を観て、胸が詰まったり、息が苦しくなったり、落涙しそうになったりと、さまざまな感情を味わってきましたけど、今回は気絶という初めてのストレスを体感しました。人間って強いストレスがかかると、そのストレスから我が身を守るために、体にさまざまな反応が出るんですけど、今回は気を失いそうになりました。

――何がそれほどのストレスだったのでしょう?

純士 登場人物に感情移入できないし、ストーリーも面白くないし、絵や音楽も嫌いだし、セリフや細かい描写も嫌い。あの監督の伝えたいことを、ほぼすべて受け入れられないというストレスです。俺にとって新海監督は、天敵に近いんですよ。前作、前々作でも痛い目に遭っていて、若干トラウマが入っているから、今回はかなり構えて鑑賞に臨んだんですけど、始まってすぐに「あ、ダメだやっぱり。これは耐えられない」と、へこたれてしまいました。

――始まってすぐにストレスの種などありましたっけ?

純士 すずめの「ハァ、ハァ、ハァ……」という息遣いから映画が始まったじゃないですか。あれがほとんどAVなんですよ。

瓜田麗子(以下、麗子) 私もそれに文句あんねん! 私もそれがめっちゃ腹立ってん!

純士 あの喘ぎ声のせいで、いきなり嫌悪感を抱いちゃったから、心と体が「これは作品なんだ」とちゃんと認識して受け入れるまでに、さらに時間がかかってしまいました。「少しでも面白くなってくれ」と願いながら観ていたけど、なかなかそうはならないから苦痛で、苦痛で……。プライベートの映画鑑賞なら「観ているフリをして違うことを考える」あるいは「目を閉じる」という現実逃避もできただろうけど、今日は仕事で来ているので目を切るわけにはいかないし、感情移入しづらいストーリーも追わなくちゃならない。そのストレスが俺を気絶させたんですよ。

――感情移入しづらかったですか?

純士 すずめが好きになる草太っていうイケメンのキーパーソンがいたじゃないですか。彼がかなり早い段階で「椅子」になっちゃったもんだから、なんの感情も入らないんですよ。椅子に対して「好き」だのなんだの言われても、全然ピンと来ないっていう。

麗子 あの椅子、なんで3本脚やったんやろ? そこに対する説明がなかったんも気持ち悪く感じたわ。

純士 3.11で流されて壊れたってことじゃない?

麗子 え? そうなん? この映画って、阪神・淡路大震災の話やったんか。

純士 ……東日本大震災ね。それもわからずに泣いているんだから、ウチの嫁はほんとにバカな女だと思いますよ。

https://www.cyzo.com/2022/11/post_328596_entry.html