非営利団体「言論NPO」(東京)と中国国際伝播集団は30日、第18回日中共同世論調査結果を発表した。2005年の調査開始以来、初めて台湾海峡の問題に関して質問。数年以内あるいは将来に台湾海峡で軍事紛争が起きると回答した人は中国側で56・7%、日本側でも44・5%に達した。一方、日本側の中国に対する印象を「良くない」とした人は前年より微減したものの87・3%に達し、高止まりが続いている。
海峡での紛争を巡る中国側の回答は「数年以内に起こる」が16・2%で、「将来的には起こる」が40・5%。「起こらない」は29・9%、「分からない」は12・8%だった。緊張の原因となっている国・地域を尋ねる質問では「米国」との回答が52・5%、「日米」が25・8%を占めた。
米国は台湾への関与を強め、日本も米国に歩調を合わせている。台湾を領土とみなす中国側の反発が民意にも表れた形だ。
日本側で「数年以内」と回答したのは10・4%、「将来的には」が34・1%。「起こらない」は9・0%、「分からない」が46・3%だった。緊張の原因国は63・7%が「中国」と回答し、「米国」「日米」は計4・0%。中国側との認識の違いが際立った。
言論NPOの工藤泰志代表は「米中対立への継続した緊張感が中国国民の中にあるのではないか。8月のペロシ米下院議長による台湾訪問と中国の大規模軍事演習も影響した可能性がある」と語った。
一方、沖縄県・尖閣諸島をめぐる日中の対立を念頭に「日中の領土を巡る対立をどのように解決すべきか」と聞いた設問では、中国側で「両国間ですみやかに交渉し、平和的解決を目指すべきだ」との回答が前年比18・0ポイント増の52・6%だった。この背景について工藤氏は「米中対立に懸念を抱く人が増え、さまざまな問題を平和的に解決しようと考える人が増えているのではないか。日中の民意が近づき始めている」と分析した。
日中双方で相手国の印象を「良い」(「どちらかといえば」を含む、以下同)とした人は中国側で前年比3・2ポイント増の35・2%、日本側で同2・8ポイント増の11・8%。「良くない」と回答した人は中国側で同3・5ポイント減の62・6%、日本側で同3・6ポイント減の87・3%だった。日本側の「良くない」との回答は12年以降、常に8割を超えている。
日中が22年に国交正常化50周年を迎えたことについて中国側の73・9%、日本側の67・1%が「知らなかった」と回答。現在の日中関係について「どちらかといえば不満」「とても不満」と回答した人は、中国側で50・5%、日本側で43・9%に上った。理由については、いずれも「現状の両国の政治的関係が友好でないから」が4割に上った。
調査は7月23日~9月30日、日中両国で18歳以上の男女を対象に実施。日本で1000人、中国は1528人が回答した。【畠山哲郎】
https://mainichi.jp/articles/20221130/k00/00m/030/145000c