自衛隊施設8割で防護性能なし 施設強靭化1・7兆円

全国に2万超ある自衛隊施設の約8割が、敵からの攻撃に耐えうる防護性能を満たしていないことが防衛省の調査で18日、分かった。現行の耐震基準を満たしていない施設も全体の約4割に上る。政府は令和5年度からの防衛力の抜本的強化策の一環として、今後5年間に計約4兆円を投じて機能強化を進め、おおむね10年後までに全施設で防護性能の整備や耐震化を完了させる考えだ。

防衛省は全国に陸海空の各自衛隊施設2万3254棟を所有する。このうち1万9017棟は、NBC(核・生物・化学)兵器や敵戦闘機による空爆などの攻撃を想定した基準を導入した平成15年以前に建てられた。そのため、全体の約8割の施設で排水溝への有害物質の流入を防いだり、密閉性を高めたりするなど防護対策が急務となっている。

また、基地や駐屯地などで建物が密集していると、敵の空爆攻撃を受けた際に一斉に被害を受けるリスクがあるのを踏まえ、施設の建て替えに合わせて再配置と集約化も進める。施設間に一定距離を確保し、空爆への被害を最小限に抑える狙いがある。

一方、昭和56年の建築基準法改正に伴う新耐震基準を満たしていない施設は9875棟で、全体の約4割を占める。震度6以上の大地震が発生すれば、倒壊などで機能不全に陥る可能性があり、老朽施設の建て替えや構造強化を急ぐ。

政府は16日に閣議決定した国家安全保障戦略など「安保3文書」で来年度から5年間の防衛力整備経費に約43兆円を計上。このうち約1・7兆円を防護性能や耐震性の向上に支出し、5年後までに防護性能については全施設の約6割、耐震化は約8割で必要な機能を確保する。このほか、主要な司令部の地下化に約2千億円、津波などへの災害対策に約4千億円など、自衛隊施設の強靱(きょうじん)化経費は計約4兆円を見込む。
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