「辞めるなら1億円払え」。4年前、ワイドショーで連日取り上げられたこのセリフを覚えているだろうか。愛媛県でご当地アイドルとして活動していた少女(当時16歳)に対して、所属事務所の社長が言い放ったとされる言葉である。少女は自殺。2018年10月、遺族は「事務所のパワハラが自殺の原因」として約9200万円の損害賠償を求めて社長らを提訴した。12月21日、この裁判の控訴審判決が出たが、一審に続き「パワハラは認められない」とする被告の全面勝訴。「1億円発言はなかった」と2度も法廷で認定されたのだ。だが、当時大々的に報じたテレビは、この結末について沈黙し続けている。

(中略)

 だが、時間が経過するにつれ心の中にもやもやとしたものが広がり出した。「なぜテレビはニュースにしてくれないのか」。テレビが報じた一審判決は、報道番組が数えるほどで扱いはストレートニュースだった。
「提訴の時、ワイドショーはあれだけセンセーショナルに報じたのですから、結末をきちんと報じる責任があると思うのです。当時、遺族側が発信した内容に基づいて報道したというマスコミのスタンスも理解しています。でも、その内容が間違っていたならば? その報道によって傷ついた人がいたならば? 遺族への配慮で放送できないという理由は当たらないと思うのです。私たちは遺族からいわれなき責任を転嫁され、訴えられたのですから」

https://www.dailyshincho.jp/article/2022/12220601/?all=1