「絶好の痴漢日和です!!」「試験に間に合わないと困るので声を上げない可能性が高い」――。大学入学共通テストの受験生などを狙い、SNSには鉄道での痴漢や盗撮をめぐる心ない投稿が相次ぐ。こうした犯罪を撲滅しようと、愛知県警が駅などで啓発動画を流している。制作したのは同世代の高校生3人だ。

県警鉄道警察隊が2022年に認知した列車内や駅での痴漢・盗撮の相談件数は311件。受験期にはSNSなどで「痴漢日和」などという卑劣な投稿が目に付く。鉄警隊にもこの時期、保護者から「もし被害に遭ってしまったらテストで力を発揮できない」といった相談が寄せられる。

「同世代の感覚を生かした方が伝わりやすい動画になるのでは」。県警が動画の制作を依頼したのは、愛知工業大学名電高校(名古屋市千種区)。情報デザイン部の小島凛久(りく)さん(2年)ら3人が約半年かけて完成させた。

動画は1分4秒で、「ちかんから身を守る三つの対策」を紹介する。「扉付近や連結部は周囲からの死角が生まれやすくなります」「女性専用車両がある場合は積極的に活用を」と文字と音声で呼びかける。

小島さんは企画段階で、「アニメーションは実写に比べて、伝えたいことが損なわれるのでは」と悩んだという。それでも、色を統一したり、要素を最小限にしたりすることで、シンプルでわかりやすい動画に仕上げた。小島さんは「同世代の被害を少しでも減らすことができれば」と話した。

https://www.asahi.com/sp/articles/ASR1C7SGFR16OIPE002.html?iref=sp_new_news_list_n