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マンション近くの公園に…各自治体が整備を急ぐ公衆喫煙所、どう折り合う?住民は「副流煙が漂うのでは」と懸念の声

 「喫煙所が近所の公園に計画されている。作らないでほしい」。東京都足立区の住民から、こんな投稿が本紙に届いた。2020年春の改正健康増進法の施行で屋内喫煙が制限され、屋外の喫煙マナーが問題化。各地の自治体は公衆喫煙所の整備を急いでいるが、公園への設置には心配の声が上がる。
◆設置の足立区は「密閉式で煙が外に漏れる恐れ少ない」

 東京メトロ千代田線北綾瀬駅(足立区谷中)に隣接する区立しょうぶ沼公園は140種のハナショウブの名所として知られる。秋晴れの10月下旬、落ち葉や木の実を拾う保育園児や、ベンチでくつろぐ高齢者の姿があった。
 喫煙所は北綾瀬駅に面する公園内の植え込みに、区が設置予定。定員8人のコンテナ型で、区の担当者は「密閉式で煙が外に漏れる恐れは少ない」と話す。
 投稿者の巻島豊二さん(80)は、喫煙所予定地から直線距離で約50メートルのマンションに暮らす。「副流煙がベランダや室内に漂うのでは」と切実だ。巻島さんが区内の別のコンテナ型喫煙所を見に行くと、喫煙所に入る前にたばこに火を付けたり、ドアを開けた状態で吸ったりとマナーの悪さが目についた。「公園で過ごす子どもや高齢者が受動喫煙の被害を受ける」とし、設置場所の変更を訴える。
 別の区民からも計画見直しを求める陳情が区議会に出され、9月、区議会区民委員会は継続審議とした。
 北綾瀬駅周辺では、歩きたばこや吸い殻のポイ捨てについて苦情が絶えず、区は喫煙所の設置で解決したい考え。駅の高架下なども検討したが、地権者との調整が難航した。公園での設置について、担当者は「喫煙者を1カ所に集め、分散している受動喫煙の被害を防ぐことが目的。丁寧に説明し、理解を得たい」としている。
◆千代田区は地元町会の合意が条件
 屋内喫煙の規制が強まる一方で、屋外での受動喫煙対策も課題になっている。
 都の都民意識調査(昨年11月)によると、受動喫煙の経験は「飲食店(夜)」が29.1%で、屋内を原則禁煙とする都条例施行前(19年10月)の48.8%から大幅に減ったが、「路上」は逆に51.1%から61.3%に増えた。
 対策は区市町村に委ねられている。オフィスや飲食店がひしめく港区は、計100カ所の喫煙所を設置した。都が都内飲食店に昨年実施した「受動喫煙防止対策実態調査」では、都への要望で最も多かったのが「喫煙所整備」(24.9%)だった。区の担当者は「路上喫煙を防ぐと同時に、みんなが快適に過ごせる街にしたい」と説明した。
 多くのサラリーマンが行き交う千代田区は全国初の罰則付き路上喫煙禁止条例を02年に施行し、積極的に喫煙所を設置。昨年度、新設と維持管理で約2億3000万円の予算をつぎ込んだ。今は14年度の2倍近い75カ所だ。24年度に累計100カ所を目標にする。住民に配慮し、新設時は地元町会の同意が条件だ。反対が強い場合は設置しない。
 住宅街の喫煙所は「迷惑施設」と受け取られることが少なくない。都福祉保健局の担当者は「自治体が喫煙所を設ける場合は、受動喫煙が容易に発生しないような場所にしてほしい」と求める。公園内の設置については「子どもの利用状況などを踏まえて判断するべきだ」と言う。
 たばこ対策に詳しい大阪国際がんセンターの田淵貴大医師(公衆衛生学)は「受動喫煙の害が明確な中で子どもや妊婦も利用する公園や駅前は、たばこを吸えない場所にするべきだ。これらの場所への設置は倫理に反する」と述べた。