中国のゲーミングスマートフォンメーカー「Black Shark(黒鯊)」が、元従業員に約束通りの退職金を支払っていないことが発覚した。Black Sharkおよび同社の羅語周・最高経営責任者(CEO)が中国のSNS「微博(Weibo)」に開設している公式アカウントには、退職金を支払うよう求める元従業員の声が大量に寄せられている。

Black Sharkは2022年9月にリストラに着手し、最終的に従業員の8割以上を解雇。退職金は、直近12カ月の平均給与×勤続年数を「N」とし、これに平均給与1カ月分を加える「N+1」方式で支給することとした。ベテラン従業員ならば、退職金は数万〜十数万元(100万円弱〜300万円程度)になる。

同社は退職金を6カ月に分けて支払うと約束していたが、元従業員の多くは1月10日時点で1回目の支払いしか受けていない。しかも、その額はわずか2000元(約4万円)だった。会社からは1月10日ごろ、「深刻な経営難に陥っている」「約束していた金額を全額支払うことができない」とのメッセージが送られてきたという。

経営陣と連絡が取れないため、多くの元従業員は同社に対する訴訟を準備しているという。もぬけの殻になった上海オフィスの入り口には、支払いを求める横断幕が張り出されている。
もぬけの殻になった上海オフィス

Black Sharkは2017年に設立され、中国のゲーミングスマホを代表するブランドとして一世を風靡した。初代機種の販売台数は数十万台に上り、最盛期には中国のゲーミングスマホ市場で7割を超えるシェアを占めた。しかし、ゲーミングスマホ市場の冷え込みとともに、同社の業績も下降線をたどっていった。調査会社「鯨参謀」によると、22年のゲーミングスマホ市場は大幅に縮小し、1〜9月の販売台数は前年比で4割近く減少して約320万台となった。

Black Sharkはゲーミングスマホから路線を切り替え、VR(仮想現実)製品を打ち出す準備を進めていた。2022年1月には、テンセント(騰訊)が同社を買収し、VR市場参入の足がかりとする計画だと報じられた。同社もVR分野に軸足を移すため、事業再編を実施した。

ところが同年10月には、テンセントがすでにBlack Sharkの買収を断念したと報じられた。買収計画の終了とともに、同社の大規模リストラは始まっていたという。

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