「中華メイク」に憧れる日本の女性たち——コスメトレンドが中国から逆流

日本の若い女性たちの間で中国美女風の「中華メイク」が人気だと、英誌「エコノミスト」が伝えている。流行の背景には、若い世代の中国に対する「親近感」があるという。

「チャイボーグ」から「純欲メイク」へ

輝く白い肌、真っ赤な唇、キラキラな目元——台湾出身で日本在住のチャン・チアジュンは、そんな「中華メイク」が大好きだ。中国のソーシャルメディア「小紅書(RED)」のインフルエンサーから学んだという。

現在はチャン自身が、日本人向けに中華メイクのチュートリアル動画をインスタグラムやツイッターに投稿。何千人ものフォロワーにそのメイク術を伝授している。

日本での中華メイクのブームは、4年前に「チャイボーグ」と呼ばれるメイクがブレイクしたことから始まった。チャイボーグとは、中国とサイボーグを組み合わせた造語で、人間離れした完璧な顔立ちを指す。

その後、中華メイクのトレンドもやや変わり、いまは魅惑的でありながら純情そうに見える「純欲メイク」が流行っている。

中国のセレブは「別次元の美しさ」を持っていると、ネットで多くのフォロワーを持つ24歳の日本人女性、ななこは言う。

世界のコスメ市場で中国が日本を抜いた

日本ではこうした中華メイク人気を受けて、「花西子(フローラシス)」や「ZEESEA(ズーシー)」などの中国発コスメブランドの売り上げも急増している。

日本は長年、化粧品の市場規模でアメリカに次ぐ世界2位の座を維持してきたが、2019年に中国に抜かれた。中国の化粧品メーカーは、売り上げの増加とともに競争力や独創性を高めている。

近年は尖閣諸島問題や台湾をめぐる緊張が日中関係に影を落としているとはいえ、半導体など政府がコントロールしようとする製品とは異なり、化粧品は「非政治的」だと亜細亜大学の後藤康浩は言う。その背景には、日本、中国、韓国の若者文化の類似性が高まっていることがあると、後藤は指摘する。

一定の年齢以上の日本人は中国製品を「劣っている」とみなして避けてきたが、彼らの子供世代にそんな思い込みはない。

2021年に実施されたある調査では、18~19歳の日本人の40%以上が中国に「親しみ」を感じていると答えたのに対し、60~70代ではわずか13%にとどまった。

北京語言大学東京校に勤める菅井史仁は、同校で中国語を学びはじめたきっかけとして「中華メイク」を挙げる若い受講生が多いと話す。

「日本人が中国を“クール”だと思うようになる日が来るなんて思ってもいませんでしたよ」

https://courrier.jp/cj/314238/