日本国内はもちろん、北米でも大きな人気を集め、海外市場における日本製マンガの躍進を支えた『NARUTO-ナルト-』。
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そんな本作では、ナルトの「だってばよ」やサクラの「しゃーんなろー」をはじめとする個性的な言葉遣いや、「螺旋丸」といった漢字を組み合わせた技名など、日本語ならではの表現が目立ちます。

果たしてこれらは海外版で、どのように翻訳されているのでしょうか。

今回は海外版『NARUTO-ナルト-』の翻訳出版を担当したアメリカの出版社・VIZ Media(ビズメディア)のAlexis Kirschさんとフリーの翻訳者の森本マリさんにご登場いただき、日本語表現や日本の文化を翻訳する際の工夫、そして海外版刊行へ至るまでのプロセスを深掘りしました

――『NARUTO-ナルト-』といえば、ナルトの「だってばよ」という口癖が有名ですが、以前日本のファンの間で「Believe It」と英訳されていることが話題になっていました。なぜこのような英訳になったのでしょうか。

Alexis:実は「Believe It」は、アニメ版で採用された英訳で、マンガには登場していないんです。

アニメ版で「だってばよ」を「Believe It」と英訳した理由は、キャラクターの口の動きに合わせて違和感のない表現を考えたらそうなった、というアニメ吹き替え特有の事情があったからだと思います。

――では、マンガでは「だってばよ」をなんと英訳したのでしょうか。

森本:実は、「だってばよ」に固定の英訳はなくて。

――えっ。そうなんですか!?

森本:私は2巻から『NARUTO-ナルト-』の翻訳を担当したのですが、前任の翻訳者が担当した1巻を読み返した時に「だってばよ」が翻訳されていないことに気付きました。

当時の編集に確認したところ、「だってばよ」をどう訳すのかといった議論はあったものの、結局翻訳しないという結論になったそうなんです。

ですが、シーンによっては「だってばよ」が重要な時もあるので、基本的には翻訳しないものの、適宜必要に応じて……という感じでした。翻訳が必要な時は「I tell ya」と訳していたのですが、日本語にすると「だからそう言ってんだ!」みたいなニュアンスです。ただ、この表現はほぼ登場しなかったように思いますが。

ーー他にも、「だってばよ」以外にも木の葉丸の「コレ!」やサクラの「しゃーんなろー」、サスケの「ウスラトンカチ」など独特の言い回しが登場しますが、これらも英訳されていないのでしょうか。

森本:木の葉丸の「コレ!」は初期の頃は「Right?(そうでしょ?)」と英訳されていました。