１０万人を超す死者を出した関東大震災。１９２３年（大正１２年）に発生してから今年で１００年になります。震災の起こった９月１日は「防災の日」とされ、本格的な地震防災の原点ともなった地震でした。
この震災を引き起こした地震は「関東地震」や「大正関東地震」とも呼ばれます。この地震はどんな地震だったのでしょうか。どんな被害が出たのでしょうか。また、今後も起こるのでしょうか。連載で考えます。
＜仕組み＞
「きわめて稀（まれ）な地震」。関東大震災の被害をまとめた内閣府専門調査会の報告書は、関東地震についてこう結論しています。この稀は、めったに起こらないという意味ではなく、他にはない特徴を持つ地震だということなのです。それが多数の死者を出した大きな原因でもあります。その特徴を表す鍵は「海」と「陸」です。
◇トラフ
関東地震は、「相模トラフ」という浅い海溝に沿って発生する「海溝型」と呼ばれる巨大地震です。地震の規模を示すマグニチュード（Ｍ）は７．９でした。相模トラフは伊豆半島の東側の相模湾から房総半島沖へと延びています。
一方、伊豆半島西側の駿河湾には「駿河トラフ」があり、四国・九州沖にまで延びて全体で南海トラフと呼ばれます。このトラフ沿いでは南海トラフ地震と呼ばれる一連の海溝型の地震が昔から繰り返し起きています。
この二つのトラフの地震は共通の仕組みで起こります。日本の南方の太平洋の海底には「フィリピン海プレート」と呼ばれるプレート（岩盤）があり、北西方向に少しずつ動いています。そして日本列島のある陸のプレートにぶつかり、その下に潜り込んでいきます。潜り込みの入り口が相模トラフや駿河トラフなのです。
フィリピン海プレートが潜り込むとき、陸のプレートが一緒に引きずり込まれて押し縮められ、地震のエネルギーがたまるのです。これ以上縮めなくなるところまでくると、陸のプレートは一気に跳ね返って伸びます。その揺れが海溝型地震です。
関東地震も南海トラフ地震も、フィリピン海プレートの動きによって起こる“親戚”のようなもので、規模も似ています。最も新しい時期の南海トラフ地震は、４４年の昭和東南海地震（Ｍ７．９）、４６年の昭和南海地震（Ｍ８．０）です。ともにＭ８前後の大きさです。
◇強い揺れ
似てはいますが、関東地震は特有の性質を持ちます。「その特徴は、直下型地震でもあったところ」と、纐纈（こうけつ）一起・慶応大特任教授（地震学）は話します。
国内の地震は大きく二つに分かれます。一つは海溝型地震。もう一つは内陸の断層で起こる「直下型」の地震です。
直下型は、人の住む陸地が震源の地震です。都市部で起こると大きな被害が出ます。典型的な例は、９５年に阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震です。津波は起きませんが、震源が近いので強い揺れに襲われます。この震災では建物の倒壊や転倒した家具の下敷きになるなどして６０００人を超す死者が出ました。
相模トラフは関東の沿岸近くを走っているので、関東地震の震源域は、ほとんど神奈川県や千葉県の直下にあります。東南海・南海地震の震源域が主に沖合なのとは大きく違います。
纐纈さんらは、地震計の記録や地盤の隆起量などを基に、大正関東地震の断層の滑りを計算したところ、神奈川県の小田原付近と、三浦半島から房総半島にかけての２カ所で最大１０メートルほども断層が動き、強い揺れが出たことが分かりました。まさに首都圏直下地震です。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/224147
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