「豚骨王国」福岡のラーメン業界に異変 新ジャンル進出の理由

 「豚骨1強」の福岡のラーメン業界に近年、新風が吹いている。福岡市・天神地区には、しょうゆやつけ麺などの「非豚骨」系を主力とする店が続々と進出。その勢いは豚骨を上回るという。背景には、豚骨ならではの事情がのぞく。

 豚骨が4割、非豚骨が6割―。2022年に県内でオープンした店の割合だ。調査した豚骨ラーメンライターのオゴポコさんによると、全国の有名店が集まる「ラーメン滑走路」が福岡空港にオープンした17年から非豚骨系が増えた。19年以降は豚骨を上回るように。異業種や他県からの進出が非豚骨ブームを後押ししているとみる。

 天神には、横浜発祥の豚骨しょうゆ「家系」や煮干し、宮崎発の辛麺など、昔ながらの豚骨以外を提供する店が並ぶ。タウン誌「シティ情報ふくおか」の調べでは、21年11月~22年10月に市内で新規開業した店は豚骨が13に対し、非豚骨は36に上る。コロナ禍で豚骨を食べ歩く観光客が減り、嗜好(しこう)が多様化した地元の人たちを意識する動きも加速している。

 21年に博多駅に店を構え、22年10月と今月に相次いで天神エリアに出店した「明鏡志水」は、和風だしの塩・しょうゆが看板だ。監修した和食料理人の秋吉雄一朗さんは「最近は違う味を求める人が増え、勝機があると思った」と語る。
 1937年に福岡県久留米市で生まれて以来、豚骨文化が根付いてきた。「王国」に挑むブームの裏には、特有の事情がありそうだ。

 ある店では、においが強いことから不動産に敬遠され、物件探しが難航した。別の店主は「ガス代だけで月に20万円かかる」。豚骨はスープを炊く時間が長く、光熱費が重くのしかかる。一方、非豚骨店では光熱費のコスト分を材料に転嫁することで、高めの価格設定ができる。

 地元の「愛の強さ」が壁になっている側面もある。味や具に独自性を出すと「これは(福岡の)豚骨ではない」と受け入れられないリスクから、出店をためらうケースもあるという。「豚骨以外の方が地元のルールに縛られず、味も価格も自由に勝負できる」との声もあった。

 ラーメン評論家の山路力也さんは、非豚骨系が供給過多になりつつある現状を踏まえ、あと数年でブームは終息するとの見方を示す。「福岡では豚骨が土台であることは簡単に変わらない。選択肢が広がったのは、食文化として豊かで歓迎できる」と話した。
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