「日本では男性よりも女性のほうが、幸福度が高い」という反論もあるだろう。

近年、そうした調査結果がいくつか発表されてそれどころか、「幸福度の男女間格差」という点で見ると、「女性のほうが男性よりも幸福だ」と感じている国の中で、一番男女間格差が大きいのが日本なのだそうだ(世界価値観調査、2010。ちなみに、この調査では、男性のほうが女性よりも幸福な国もかなり多くあり、男女差がない国も多い。女性のほうが男性よりも幸福度が高い国には、紛争国等戦闘に男性が多く従事している国や、東アジア儒教圏が多いという)。

日本の女性の約90%が「幸せ」と回答したのに対し、男性は約82%しか回答しておらず、その差は約8%で世界一大きいという。「女性が世界一幸福な国」「男性が世界一不幸な国」などの見出しのネット記事も多く出回っている。

しかし「主観的な幸福度の高さ」は、客観的な生活の質の高さを意味しない。

「女性の方が、幸福度が高い」という調査結果の一つである男女共同参画局の調査(平成22年度)は、居住・余暇・家計・友人関係・健康。仕事等、各要因に対する生活満足度も、同時に発表している。
確かにそれらの個々の要因に対する男女別生活満足度は、過半数の項目で男性の方が、満足度が低い。

けれども、統計的にはずっと条件が良いはずの「仕事」においてさえ、男性の満足度の方が女性よりも低いのだ。
さらに、「配偶者との関係」や「家庭生活」などにおいては、男性の満足度の方が女性よりも高くなっている。

・つまり男性は、客観的には女性よりもずっと良い条件にあるはずの仕事においても満足感が低く、

・「家庭生活」や「配偶者との関係」においては 女性よりも満足感が高い

のに、女性ほど「幸せ」とは感じていないのだ(この部分、公開当初の原稿に一部データの読み方に間違いがあり、訂正した)。

「男はつらいよ型男性学」が「男らしさイメージを変える」ことに希望を見出すのは、おそらくこうした調査結果を踏まえているからなのだろう。男性は個々の要因で見れば女性よりも「満足」してもおかしくない状態にあるのに、「本来あるべき男性性」イメージに縛られて、「幸福」であると思えないでいる。

https://gendai.media/articles/-/66706?page=3