左利きにも優しい社会へ 誰もが暮らしやすい生活は【NEXTラボ】
2/13(月) 7:02

箸にペン、はさみなど、「左利き」の人にとっては、日常生活に不自由なことが多いのではないだろうか。記者は右利きだが、娘は左利き。手先で直せることではないと知ったが、将来への不安もよぎる。昔、右利きに直されたという話はよく耳にする。「利き手」をキーワードに、誰もが暮らしやすい生活について考えてみたい。

不便は日常のあちこちに

 牧之原市内でクラフトビール醸造会社を経営する月居麻水[つきおりまみ]さん(48)と、その商品ラベルを描くイラストレーター岩本陽子さん(46)。2人は2年前、新商品を作る中でお互いが「左利き」だと知り、“左利きあるある話”で盛り上がったという。あらためて、日常の不便さや「右利き」の人に知ってもらいことを聞いた。

家庭科で痛感

 ―「左利き」と気付いたのはいつか?

 月居さん「物心つく頃にはペンも箸も右手に持ち、それ以外は左手を使っていた。左利きだった父の思いもあっただろう。『鉛筆と箸は右手に直すけど、それ以外はいいよ』と言われた。左利きを個性として残してくれたことに感謝している。小学生のとき、授業で小刀を使うことになったが学校では左利き用は購入できず、親が特注で買ってくれた。その小刀は今でも紙を切る際などに重宝している」

 岩本さん「子どもの頃から字は右手で書いたが、絵筆は左手に持っていた。保育士だった母から『無理に右で書くようには勧めないでいた』と後で聞いた。今は右でも左でも文字を書けるが、自分らしい個性的な字を表現したいときは左手を使う。高校家庭科の授業で棒編みの課題が出されたが、提出できず、ミシンも難しかった。自分が左利きだと痛感した」

 ―日常生活で苦手なこと、不便に感じることは?

 岩本さん「アイロンや掃除機など、電化製品のコードが左手前に付いていて、まとわりつくが、右手では力が入りづらい。コードレス商品が登場して快適になった。飲食店では、隣の人と肘がぶつからないように左端に座る。カップや箸の向きは直してから。すしが右下がりに置かれてたり、カットケーキの先端がお皿の左側に向いていたり、日常のちょっとしたことだけど、世の中は右利きの人向けにできていると思う」

 月居さん「左側に注ぎ口があるレードル(おたま)は不便で、両側に付いたタイプはとても便利。ビールの醸造機械を点検するとき、ねじ回しなど右手では最後まで力が入らない。命取りにもなるから、最終点検は右利きの夫に任せている」

 岩本さん「インドネシアを旅行したとき、現地のガイドさんに写真を撮ってもらおうとカメラを左手で渡した。すると彼は顔を曇らせ、『左手を使うことは気を付けた方がいい』と忠告された。宗教的にタブーとされる国では気を付けようと思った」

少数派に関心を

 ―右利き優先の世の中に思うことは。

 月居さん「ひと手間が面倒なときもあるが、切実というほどではない。どの分野でも少数派はいる。そのことに関心を向けてもらうきっかけになればいい」

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https://news.yahoo.co.jp/articles/46615d6df789167c53a8cdc0d66443bbd76c2a30