「引きこもりの息子」と「高齢の妹」殺害 79歳の女が追い詰められた“浪費”と“老々介護”
2023年2月18日 7時0分
TBS NEWS DIG

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「殺してと言われたので…」法廷でこう述べた女の被告は79歳。白髪を後ろで一つに束ね、耳には補聴器をつけていた。本人からの依頼で47歳の三男を殺害した嘱託殺人の罪と、74歳の妹を殺害した罪に問われている。犯罪とは縁もなく過ごしてきた高齢の被告が、わずか半年の間に、なぜ実の息子と妹を次々と殺めてしまったのか。

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法廷で取材を重ねると、夫の急死、引きこもりの息子によるネット通販の浪費、統合失調症を患っていた妹の体調悪化、それに伴う老々介護。被告が追い詰められていった4つの背景が見えてきた。

夫の急死 “引きこもり息子の浪費”が殺害引き金に
小玉喜久代(こだまきくよ)被告(79)は2021年4月、東京・あきる野市で同居する三男・昭さん(47)から依頼されて殺害した罪に問われている。統合失調症と糖尿病を患っていた昭さんは当時無職。通院や近所への買い物で外に出る以外、基本的には自宅でゲームなどをして過ごす、いわゆる引きこもりだった。長男と次男は自立し、夫婦と昭さんの3人で暮らす中で、小玉被告は昭さんの“金遣い”に頭を悩ませていた。昭さんは1か月あたり約6万5000円の障害年金を受け取っていたがほとんど使い果たしていた。

【小玉被告への被告人質問(抜粋)】
ーー昭さんはアマゾンで何を買っていた?
お酒やCD、ゲームソフト、本、洋服などです
ーー携帯代はネットでの買い物も含めて請求されていたようだが月にいくら?
5万円くらいの時もあったし7~8万円の時ももあった
ーーアマゾンでの買い物に加えて携帯代など月6万5000円じゃ足りなかった?
(無言でうなずく)
ーー金遣いについて注意は?
「考えて使いなさい」と常々注意はしていたけど、なかなか直らなかった

夫婦の年金から20~30万円ほどの補填を繰り返していた、と小玉被告は証言した。こうした暮らしに変化が訪れたのは事件の約2週間前。夫が突然自宅で倒れ、急死したのだ。

ーー昭さんに何か話した?
「お父さんいなくなって年金がすごく減るから考えてね」と
ーーなぜ注意した?
これからの生活に不安を感じて…私が元気なうちはいいけれど、と常々思っていました

法廷で証言した次男によると、小玉被告は「気持ちが不安定になり笑うことが少なくなっていった」。将来への不安を胸に抱えた小玉被告の気持ちをよそに、昭さんの浪費が止むことはなかった。検察側の冒頭陳述によると事件当日も昭さんがネットで注文した荷物が届き、小玉被告が注意したという。これが悲劇の引き金になってしまう。小玉被告が冷蔵庫からインスリンがなくなっているのに気づき昭さんの部屋に向かうと、大量の注射器が散乱していた。自殺を図った昭さんは意識がもうろうとした状態で、こうつぶやいた。「死にきれなかったから殺して」小玉被告は近くにあったトレーナーを手に取り、我が子を手にかけた。

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