文字の成立を論じるに際は、何を以て記号から文字を分離するのかという問題にぶち当たる
ホモ・サピエンスの時代から人類は絵画を描いていたわけで、動物や人の姿・日の出や山々・数のような簡単な概念はどの社会でも記号として、なかば絵画のような表現で存在する
結局、文字と記号を分ける要素は文章を構成するかどうかでしか判断できないと思われる
文章というのは、構成要素が変わっても、(「私」が「あなた」に変わっても)文意が成立するという構造のことである
したがって、何らかのマークが単独で存在していた場合、それが文章を構成する一パーツなのか、単体でも意味をなす記号なのか、判別できない
少なくとも東アジアにおいては、間違いのない文字の出現は殷代後期にまでしか遡ることができない。これは、もっと古い遺跡から単独の文字のようなものが見つかったとしても、覆ることはない