なぜ伊藤忠では出生率高いのか 子育て支援政策の参考に 東京大名誉教授 伊藤元重

1人の女性が一生の間に産む子供の平均数のことを合計特殊出生率という。人口の維持には合計特殊出生率2・06から2・07は必要だが、日本全体の合計特殊出生率は令和3年時点で1・30なので、人口は急速に減少していることになる。それを止めるには合計特殊出生率を引き上げなくてはいけないが、なかなか難しそうだ。
それどころか近年、合計特殊出生率は下落を続けている。昭和50年に2を割り込み、平成7年には1・5を下回り、17年には過去最低の1・26を記録した。そこからは少し戻しているとはいえ、1・30という数字はいかにも小さい。

出生率のデータを見るたび、人口減少を続ける日本の未来を考え暗い気持ちになるが、そうした中、少し前に大手商社の伊藤忠商事の方から驚くべき話を聞いた。
伊藤忠のビルの中で働いている女性の合計特殊出生率は令和3年時点で1・97だというのだ。伊藤忠で起きていることが日本中で広がれば、日本の人口の未来にも明るさを見ることができるかもしれない。

なぜ伊藤忠では出生率が高いかについてはきちっとした調査・分析が必要だろうが、同社の働き方の柔軟性は、子育てをする社員への支援となっているようだ。大胆な時差出勤を可能にしたことにより、保育園を利用しやすくなったことを指摘する声があるのだ。
例えば、母親が早朝に出勤して父親が子供を保育園に送り、夕方は母親が迎えに行く。そのようにして、仕事の生産性を下げることなく、子育てにも時間を割くことを可能にしているのだ。

https://www.sankei.com/article/20230227-IUKOMF2YEBPMBBHDYNXRWK7E3I/