産経新聞のインターネット版に事実と異なる記事を掲載され、名誉を傷つけられたとして、
沖縄県宮古島市の元市議石嶺香織さん(42)が、産経新聞社に記事の削除と220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は2月28日、記事は誤りとして、
同社に記事の削除と慰謝料11万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 判決などによると、記事は石嶺さんが市議在職中の2017年3月22日、
産経新聞のインターネット版に「自衛隊差別発言の石嶺香織・宮古島市議、
当選後に月収制限超える県営団地に入居」の見出しで掲載。記事のビュー数は4万件を超えたとされる。
その後、ネット上に「議員辞職当然だな」などと石嶺さんを中傷する書き込みがあったとされる。

 判決で古庄研裁判長は、石嶺さんの入居申し込みは当選前で、議員報酬を得ていないために入居資格を満たしていたと指摘。
入居後に収入が基準を上回った場合でも、3年以上入居した場合に収入超過者と認定されることなどから不正入居の事実はないと認定した。
 さらに石嶺さん本人や沖縄県住宅課、宮古島市議会事務局に取材していないとして「(記事は)
基本的な取材を欠いた不十分なもの」と指摘。記事の公開から4年以上たった現在もウェブサイトで閲覧でき、
石嶺さんの社会的評価の低下や精神的苦痛は大きいと認めた。

 判決を受け、石嶺さんは「記事がデマだとはっきりし、ほっとした。沖縄の島々に軍事基地が造られる不安から、
基地建設を止めたいと市議に立候補した。記事は、基地を造ることへの批判の声をふさぎたかったのでは」と話した。
石嶺さんによると、記事の公開直後、自身が使っていた駐車スペースに鉄柱がついたブロックが置かれるなどの嫌がらせも受けたという。

 これまでの証人尋問によると、記事を書いた男性記者は当時、那覇支局長として勤務していた。記者は自身一人で忙しく「石嶺さんの電話番号を調べようとしたが、分からなかった。何でもかんでもできない。人間には限界がある」などと釈明。入居資格の基準となる月収の算出に必要な世帯収入や家族構成を確認しなかったことなどを問われ「そんな個人情報分かるんですか」などと答えていた。
 確認取材のために宮古島を訪ねなかった点は「旅費が往復で二万円くらいかかるので、出張を認められないと分かっており、行かなかった」と説明していた。(望月衣塑子)

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