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ポルトガルでは「おじいちゃん」扱い 56歳「キングカズ」が誕生日に明かした本音

サッカーの元日本代表FWでポルトガル2部オリベイレンセに所属する三浦知良(かずよし)が2月26日、56歳の誕生日を迎えた。15歳で単身ブラジルに渡り、プロ選手となって38年目。オンラインでの誕生日会見では、自身5カ国目となった海外挑戦について語るとともに、不意に年齢を痛感させられたエピソードも披露した。

◆昨年は寅さん、今年は…

J1横浜FCから6月末までの期限付きでポルトガルへ移籍。毎年恒例の誕生日会見はオンラインで行われた。55歳になった昨年はお気に入りの映画「男はつらいよ」の寅さんに扮(ふん)して登場したが、今年も仕込みに抜かりはなかった。

濃い緑のスーツに赤のストライプ柄のシャツ、黄色のネクタイでまとめたコーディネート。「説明していいですか」と自ら切り出すと「ポルトガルの国旗を意識しました」と笑った。

新天地で直面した現実は厳しい。リーグ戦はここまで5試合ともベンチ外。「自分が今の力で試合に出るのは、本当に大変なことだと思う」と置かれた状況を理解する。それでも「1分でも長くピッチに立てるように。その中で勝利に貢献できるようなプレーをして、自分の力で勝利を一つでも持ってこられたら」と衰えぬ意欲を口にした。

◆24年ぶりの海外挑戦

欧州でプレーするのは、クロアチアのザグレブに所属した1999年以来、24年ぶり。芝生がぬかるみがちなグラウンドには苦戦しているようで、「ちょっとした筋肉系の疲労感や小さな問題がたびたび起こる。コンディションを上げきれないのが現状ですね」と胸中を打ち明けた。

環境だけでなく、サッカー自体の違いも改めて感じるという。「やっぱりゴールへの意欲がすごいなと思いますね」。ベンチにいる監督も観客席のサポーターも「前にいけ! 前にいけ!」と連呼する。「ゴールに向かっていかないと、監督もサポーターも怒るんですよ」。攻撃で求められるのは得点に直結するようなプレーだけなのだ。

Jリーグでは、ディフェンスラインでゆっくりとパスを回しながら機を見て攻め上がる「遅攻」がよく見られる。三浦は「落ち着いてパスを回すのが無駄に思われることもあるけど、そういう時間も必要。こっちで見ていて、もう少し落ち着いてボールを持つ時間も必要と思うこともある」と話す。どちらが正解ということはないが、「でもやっぱりゴールへ向かう姿勢、(攻守が)切り替わったときの縦への迫力は日本とはちょっと違う」と感じている。

◆プレーへの渇望

国内で最年長記録を次々に更新してきた56歳。本人は自身の年齢をどう実感しているのか-。「65歳くらいですかね」と冗談めかしたが、ショックな出来事があったという。

サッカーボールを抱えてエレベーターに乗った際、ある親子と遭遇。すると父親が2、3歳くらいの子供にこう言った。「そのおじいちゃんからパスしてもらいなさい」

日本では経験したことのないエピソードを披露し、「やっぱりおじいさんに見えるのかな…って、ちょっとショックというか、なんとなく実感したというか」と振り返った。

50代も後半にさしかかり、いよいよ還暦も見えてくる。「こうやって皆さんと誕生日を迎えるたびに、ピッチに立ちたいという思いは強くなる」。現役生活を1年、また1年と積み重ねる中、プレーへの渇望は増すばかり。日本サッカー界のレジェンド「キングカズ」は、ポルトガルで飽くなき挑戦を続けている