アベノミクス景気、幻の「戦後最長」 政治を忖度した官僚の右往左往

 昨年8月、景気をはかる政府の新たな指数がひっそりと加わった。実に38年ぶりだという。この動きに、専門家は「そもそも景気判断を政府がすべきなのか」という根源的な問いを投げかける。背景に何があったのだろうか。

 きっかけは、2019年1月末にさかのぼる。

 この日、首相官邸で月例経済報告の関係閣僚会議が開かれ、国内経済の基調判断は「緩やかに回復している」と据え置かれた。その後の記者会見で、当時の経済再生相・茂木敏充はこう宣言した。

 「我々の政権復帰から始まった景気回復は、戦後最長になったとみられる」

 第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景気拡大の長さが6年2カ月となり、リーマン・ショックがあった08年まで6年1カ月続いた「いざなみ景気」を抜いた可能性が高い、というのだ。

 当時は米中貿易摩擦によって、中国経済が減速。英国の欧州連合(EU)離脱問題も加わり、日本からの輸出に陰りが見え、製造業は厳しい状況にあった。

 他方、国内に目を向けると東京五輪の誘致を追い風に、訪日外国人客が急増し、振るわない外需を内需が支える構図だった。

 高らかにうたった「戦後最長」宣言の陰で、経済統計を担う内閣府の官庁エコノミストの間には不安がよぎっていた。一部の経済指標が弱く、本当に「戦後最長」になるのかというものだ。


「戦後最長」とみられたアベノミクスによる景気拡大。その認定をめぐって、右往左往する官庁エコノミストからは驚くべき意見が飛び出していた。景気をどのようにはかるべきかという終わりなき問いに迫ります。


 疑念はやがて的中することに…

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