「マスクを外した顔を見たらがっかりした」などと軽い話題として取り上げられるが、多くの人たち、特に若者がコンプレックスを理由にマスクを外せず、顔を隠して暮らす社会は、平安時代の姫君ならいざしらず、現代では非常にマズい。なぜなら、目立ちたくない、他の人たちと同じでいたい、自分の個性を消したい、群れに埋もれて生きたいという願望は、個人の権利と責任がうたわれ、多様性が叫ばれる現代社会の流れにどう考えても逆行しているからだ。

絶世の美男美女でない限り、いや美男美女であっても何かしらコンプレックスを持つものだ。そんな不完全な自分と社会との距離感を、時には傷つきながら学び、「個」を確立していく大事な時期が10代、20代である。そんな時期にマスクを取らずに隠れるように生きることが当たり前になってしまったら、若者たちが担う未来の日本社会は一体どうなってしまうのだろう。

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