２０１３年に熊本県立高校３年の女子生徒（当時１７歳）がいじめを受けて自殺した問題を巡る訴訟に絡み、関与した生徒名などが分かる県側の調査報告書の提出命令が最高裁の決定で確定したことを受け、同県の蒲島郁夫知事は５日、生徒名などを黒塗りにしていない調査報告書を熊本地裁に提出する方針を明らかにした。
蒲島郁夫知事
蒲島知事は定例記者会見で「最高裁の判断を厳粛に受け止め、命令に従う」とする一方、「報告書は関係者の個人情報保護を前提に取りまとめられており、最高裁の判断を仰いだことは良かった」と述べた。
報告書は１５年１月に県の第三者委員会がまとめたもので、遺族側への提供分は生徒名などが伏せられていた。遺族は、下級生への聞き取りなどで特定した元同級生８人と県を相手取り、２１年５月に損害賠償を求めて熊本地裁に提訴した。
遺族側は同８月に黒塗りではない報告書の提出を県に命じるよう申し立て、熊本地裁は２２年５月、福岡高裁は同１１月に提出を命じた。これに対し、県は同１２月、最高裁に特別抗告し、最高裁は３月３１日付の決定で特別抗告を棄却した。
原告側の代理人弁護士によると、最高裁の決定を受け、遺族は「（自殺から）１０年がたって、ようやく全容が分かる」と話したという。開示された生徒名を確認し、提訴する相手を変更する可能性もあるとした。
第三者委は１４年１月、高校の調査に納得できなかった遺族の求めに応じ、調査を始めた。１３年９月に施行された「いじめ防止対策推進法」が規定する「重大事態」に該当するとして、生徒らの実名記載の調査報告書をまとめていた。
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