
早寝早起き、そして手洗い、じつはそのほかにも一身上の大変化がコロナとともに起こった。
先月、手を洗うときに、ふと鏡を見たら、髪の具合いがなんとなく変であることに気付いた。前頭部のあたりにピンク色の地肌がすけて見えるのだ。
指でかきあげてみると、なんと!その辺一帯ごっそりと毛が抜けているではないか。
私は初老期を過ぎてからも、髪の毛がうっとうしいほど多かった。
年に何回かしか洗髪をしないのを、自慢にしていて、
「盆暮れにはちゃんと洗ってますから」
と、自慢していたくらいである。
それもこれも、自分は一生ずっとこのままだろうという自信があったからだ。
その理由なき過信が、その朝、一挙に瓦解したのである。それまで自分の毛髪の具合いなど、ほとんど観察したこともなかったのだ。
丁寧に観察してみると、頭のてっぺんや後頭部は以前のままである。しかし、前頭部から側面にかけての傾斜部分は奇麗に抜けている。いかにも健康そうなピンク色の地肌だ。
額の生え際にはある程度、残っている。それをうしろに解かすと、なんとかカバーできないこともない。
テレビで見る米国大統領やロシアの独裁者ほどではないが、かなりそっくりだ。
〈夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡〉
と、思わずつぶやいてしまった。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04090608/?all=1