竜の吐水口盗難、尾張で15件被害 神社関係者「罰当たり、情けない」

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神社から竜をかたどった銅製の水の送り口「吐水口(とすいこう)」が相次いで奪われた連続窃盗事件で、尾張地方での被害が9月初めの時点で15件あったことが本紙の取材で分かった。一宮や江南に続き、新たに犬山、あま、弥富、蟹江など周辺の市町にも被害が拡大している。
 吐水口の盗難は八月二十〜二十二日に、一宮市内の神社五カ所で相次いで発覚した。その後の取材で、犬山市で二件をはじめ新たに四市町での被害を確認。既に判明していた江南市の三件を加えると、尾張地方では計十五件に上る。
 蟹江町の冨吉建速神社・八剱社では八月二十七日、参拝客から連絡を受け、被害に気付いた。吐水口は青銅製で大きさは三十センチ。管理する住民でつくる「敬神会」の馬場恒幸会長は「罰当たりな犯行。情けない世の中になった」と憤った。付け替え費用は約二十五万円を見積もり、修復の見通しは立っていない。
 蟹江署によると、町内で他にも八月下旬に二つの神社で竜の吐水口が盗まれた。隣の弥富市でも日吉神社で犯行があったと通報があり、署はパトロールなどを強化している。
 銅は電気自動車(EV)や太陽光発電での将来的な需要が見込まれており、犯行は最近の銅の買い取り価格高騰を背景にした転売目的とみられる。県警は防犯カメラやセンサーライトで対策を呼びかけるが、神社はいつでも開いているのが基本で、対策には限界があるのが実情だ。
 一宮市内の金属買い取り業者は取材に「本当に銅製なら、それなりの価格にはなる」と話す。この業者に吐水口は持ち込まれていないが「普通、吐水口なんかが持ち込まれたら不審に思い、買い取らない。売り先を確保しているような人間が盗んでいるのだろう」と推測した。