https://news.yahoo.co.jp/articles/0cfe36dd6326e1a9f0f3440644add8c4e9c06f7c

底なしのサメ愛!元SE・「シャークジャーナリスト」に聞いた、絶滅の危機にあるサメの現状

「半年くらい寝込んでしまったんじゃないかな。大学院時代も研究室に泊まるくらい働いていたのでガッツだけはあったんですよ。それで実家の布団の中で“次は何をしようか”と、うんうん考えていたら『シャークジャーナリスト』という言葉がポンと出てきたんです」

──え、そんな天啓みたいな感じで?(笑)

「まさに。サラリーマンが合わないのなら、自分で何かやるしかないと。でも何をしたらいいのかわからない苦しみに襲われていたんです。そんなときに、以前に通っていたセミナーで“自分の好きなこと”“できること”“ニーズ”の3つを満たせば仕事になる、と教わったことを思い出しました。

 それを基に“サメが好きで、IT企業にいたのでSNSはできるし、文章も書ける。そして私の困りごと(ニーズ)はサメの話ができる友達がいないことだ”、と整理しました。それで試しにFacebookでサメのコミュニティを立ち上げたら、すぐに1200人くらい集まったんです」

──おぉ! 実はみんなサメの話がしたかったんですね。

「そうですね。それでコミュニティのリーダーになり、サメ好きのみなさんと楽しく交流しているうちに、気づけば本を出せたり、メディアに出演したり、専門学校の講師をさせていただけたりして、今に至ります」
量、潜水病などに注意することは勿論なのですが、大型の野生生物に近づくということは、常に“危険”と隣り合わせであることには違いありません」

──われわれはどうしてもパニック映画に出てくるサメの姿がパッと思いつきます。

「そうですよね。人間が跡形もないくらい食べられるシーンは“さすがにオーバーなのでは”と思いますが、間違いなく危険ですからね。“映画みたいに怖くないですよ”とは絶対に言えません」

──沼口さんは研究者ではなくジャーナリストですが、実際に潜ってサメと触れ合える存在は貴重なんですね。

「そうですね。シャーキビリティ(※)が高いですので(笑)。前編でも言いましたが、それくらいハードルが高いほうがやりがいを感じますし、多くの人がやりがたらないことだからこそ、意義があると思いますね」

※沼口さんが命名した「サメへの愛・知識」を表すフレーズ。(例)「みんな、図鑑を読んでシャーキビリティを高めようじゃないか」

──危険性もあるので、相当なサメ愛が必要になる。“どの魚でもいい”くらいの熱量ではサメの研究は難しそう……。「寿命」「個体数」「危険度」の3つがサメの研究が進まない理由なんですね。

「研究者として生活するためには、継続的に論文を書く必要があります。ひとつの論文を出すまでにかなりの労力がいるんですよね。サメを研究テーマにするのもしかりです。更にサンプル集めのハードルが高いことも多いので、研究が進みにくいのかもしれません。

 しかしながら、海洋の食物連鎖の頂点にいるサメが絶滅してしまうと、ひとつ下の中型魚が増えます。するとそのエサである小魚が減ってしまう。つまり生態系が崩れてしまうんですね。

 いま37%のサメ・エイの仲間が絶滅の危機に瀕しています。サメを保全するためにはサメの研究者がもっと増えて、サメの生態がより解明されることが必要です。こうした現状をより多くの方に知ってほしいです」

――由々しき問題が起きているわけですね。研究者が参入しにくい状況だからこそ、シャークジャーナリストとしての沼口さんの活動は光ります。

「いま専門学校で海洋生物を学んでいる学生さんにも、未来を背負う子どもたちにも、サメの魅力を発信し続けたいと思っています。

 今後は静岡県だけでなく、宮城県にも拠点を設ける予定なんですよ。それによりもっと多くの方に向けて発信していければと思っています」