「写真」を撮るカメラでは、ソニーは“弱者”だった
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●「ソニーはまだまだだよね」と思っていてほしかった
石塚:A1プロジェクトの初年度というのはこんな感じで、まだNEXもあったし、
Aマウントも売っていました。そこに、フルサイズのミラーレスを出しましたと。
でもこの時点で、ミラーレスがこの後レンズ交換式カメラの主流になっていく、
と予想した人は、あまりいなかったと思います。
――なるほどミラーレスだけあって、フルサイズでも小さくて軽いね、
でもやっぱりピントが合うのが遅いし、レンズもこれからだね、と。
石塚:そうそう。そんなふうに「やっぱりフルサイズでもミラーレスはたいしたことない」と、
デジタル一眼レフで天下を取っている上位メーカーに油断してもらうことも、実は計算していました。
――えっ、だってA1プロジェクトで5年後にシェアナンバーワン、って宣言されたと。
石塚:あの宣言はあくまで社内向けで、僕は対外的には、
「ナンバーワンになるぞ」という話はあえて1回も言わなかった。
――それはどうしてですか。
石塚:要するに、ソニーはレンズ交換式カメラではシェアが低い、
いつまでもカメラのことを分かっていない電機メーカーだ、って思わせたほうが。
――言い換えると上位メーカーがミラーレスに本気を出してきたら、
ブランドイメージが強いだけにソニーの苦戦は必至ですよね。
石塚:そうそう。もちろん、そんなに単純な話ではないけれど、
「プロやハイアマの世界では、ミラーレスはデジタル一眼レフにはかなわない」という〝常識〟が、
こちらの逆転の準備が整うまで持ってくれたらいいなと。
――「ソニーといえどミラーレス弱し」と思っていてほしい。
石塚:そうですね。表ではあくまで謙虚に。そして施策は、ZAFをはじめ、
レンズのラインナップの充実など、これでもかと打っていく。
――あまりに早く「こういう手でくるのか」と気付かれてしまうと、
デジタル一眼レフの大手が一気にミラーレスに本腰を入れてきかねないと。
石塚:だからできるだけ、最初のうちは「たいしたことないな」と思っていてほしかった(笑)。
まだ時間が必要でしたから。
――なめられているうちに力を蓄えて。
石塚:知らない間にひたひた、ひたひたと行って、戦に勝つために名より実を取るというか。