たまご高騰「もう戻らない」生産現場で何が起きているのか【報道特番】

ここ数十年、小売価格がほとんど変わらないことから「物価の優等生」と言われてきた卵の価格が、いま高騰している。そしてこの価格は「もう戻らない」という関係者も。卵の生産現場でなにが起きているのか。農水省担当記者が、食卓を脅かすそのギモンに迫った。

中略
卵の生産は、いつ再開できるのか?

品質管理部 高見澤弘明次長
「問題なければ6月から導入」

再開が6月ということは、去年12月に感染が確認されてから半年以上だ。再開されれば、ニワトリを1か月ごとに数万羽ずつ鶏舎に入れ、徐々に生産を増やす予定だ。

──もとの生産量に戻るには、どれくらいかかるんですか?

品質管理部 高見澤弘明次長
「1年から1年半と見込んでいます」

完全に復活するには、まだまだ時間がかかるという。

併設する工場では、かつて一日に70万個の卵をパック詰めにし、首都圏や東北のスーパーに届けていた。しかし今は、段ボールもきれいなまま山積みにされ、ほとんど稼働していない。養鶏場が失った売り上げについて社長は──。 

東北ファーム・山本彌一社長
「約70億円の売り上げがゼロ」 

鳥インフルエンザの被害を少しでも抑えるため、東北ファームではこれから「分割管理」を導入する予定だ。分割管理とは、養鶏場を複数のブロックに分け、作業員などがほかのブロックと接触しないように管理する。1つのブロックで感染が確認されても、他のブロックでは、生産が続けられるという方法だ。農水省は、大規模な養鶏場などに分割管理の導入を検討するよう推進しているが、設備投資や人件費など、コストがかかることが課題となっている。

ニワトリのエサ代や鶏舎の光熱費なども高騰する中、今後の卵の価格はどうなるのか。山本社長は次のように話した。

東北ファーム・山本彌一社長
「(180円~190円には)戻らないと思います。卵はもう昔のような物価の優等生にはなれない」

      ◇

収まる様子を見せない卵の価格高騰と品薄。今後どうなるのか、取材した陸口記者に聞いた。

──卵の価格は下がらないという話がありましたが、実際にはどうなんでしょうか?

陸口記者
「いろんな養鶏場を取材しても、スーパーの関係者を取材しても、しばらく下がる様子は見当たらないというのが、正直な感想です。5月くらいまで鳥インフルエンザが流行しているんですけれども、これから先ですね、11月から再び流行する可能性が高いということなんです」

──一年の半分近くが、鳥インフルエンザの流行期になるということですか?

陸口記者
「そうなんです。北海道大学の迫田義博教授によると、これまでは数年に一度の流行でしたが、今後は、毎年流行するのも覚悟しておいたほうがいいということです」 

──毎年流行する? なんで流行するようになってしまった?

陸口記者
「それは、鳥インフルエンザウイルスが変異したからなんです」

──変異した?

陸口記者
「以前は感染したら、多くの渡り鳥が死んでしまっていた。つまり、感染した渡り鳥が日本に渡ってくるということ自体が少なかった。それがウイルスの変異で、感染しても渡り鳥が死ななくなったため、ウイルスをもったまま日本に渡ってくるようになってしまった。それで、毎年流行するようになった」

──毎年流行するとなると、卵の価格はなかなか下がらない?

陸口記者
「鳥インフルエンザが流行する前は、ひとパック200円前後で販売されていましたが、今後は、300円前後で推移していく可能性が高いとみています」
https://news.yahoo.co.jp/articles/45048642a8fa753bcbca1711ec993cf4122a8f35