「バタンキュー」は脳の悲鳴の証

仕事ができて責任感の強い人ほど、ハードワークをして、つい睡眠時間を犠牲にしてしまいがちです。

それでも体力があれば、問題なく毎日過ごせてしまい、雪だるま式に仕事の量も増えていくでしょう。

そうなると、あとは時間の問題です。

いつの間にか自分の時間がなくなっていきます。

そしてある日、取り返しがつかないほど疲れがたまって動けなくなってしまった、ということになりかねません。

最新の研究で、不眠症など睡眠の問題を自覚していない人でも「毎日約1時間」の潜在的な睡眠負債があるということが明らかになりました。睡眠負債とは、身体に蓄積された睡眠不足のことをいいます。

この潜在的な睡眠負債を解消するためには、一時的な「寝だめ」では足りず、9日間連続して十分な睡眠をとらなければならないということがわかっています。

ただでさえ睡眠時間が足りていないのに、そのうえ徹夜などしてしまっては、まったく回復のめどが立たなくなってしまうのは言うまでもありません。

ちなみに、徹夜明けの翌日、「バタンキュー」で寝てしまうのは問題です。

これは、寝つきがいいのではなく、睡眠負債がたまりすぎで、脳が悲鳴を上げている状態。そのまま脳がシャットダウンしたようなイメージです。

決してぐっすり眠れていることとイコールではないのです。

「プレゼンティーイズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「病欠」を示す「アブセンティーイズム」に対して、プレゼンティーイズムは日本語で「疾病就業」と訳され、「出勤しても、頭や身体のなんらかの不調のせいで本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態」のことを指します。

睡眠負債がたまっていくと、体内時計が狂うことでこのプレゼンティーイズムに陥り、集中力が低下してつまらないミスをしてしまうなどパフォーマンスを著しく低下させることがわかっています。

このプレゼンティーイズムによって、全米では年間約1500億ドルもの損失が出ているといわれています。

2016年に発表されたアメリカのシンクタンク・ランド研究所の調査によると、プレゼンティーイズムによる日本の経済損失は、なんと1380億ドル(約18.3兆円)にも達しているとのことです。

少し前までは、成功者にはショートスリーパーが多いといわれてきましたが、それも近年見直されています。生粋のショートスリーパーはほとんどいないといわれているのです。

実際に、3時間睡眠だったとされるナポレオン・ボナパルトも、近年の調査によると、実は日中に昼寝や仮眠をとっていたという説が出ています。

一方で、Amazon創業者のジェフ・ベゾスは「8時間眠ると1日ずっと調子よく過ごせる」と語っています。また、AppleのCEOであるティム・クックは7時間睡眠といわれています。さらにMicrosoft創業者のビル・ゲイツも、7時間睡眠です。

世界的に有名な経営者の多くは、忙しいなかでもしっかり睡眠時間を確保しているのです。

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