シャープ再生 V字回復の決め手はこれだった

(前略)
 また、私は社長就任に際して「シャープが黒字転換しない限り、社長としての報酬を受け取らない」と宣言し、実際に報酬をゼロにしていた。これも早期に黒字化させる決意を示す意図があった。

 交際費も会社には一切申請しなかった。堺から東京に出張する際は新幹線に乗るが、グリーン車ではなく普通車に乗った。出張とは会社の資金を使った公務であるからだ。

 社長報酬をゼロにしていたことに関しては、こんなエピソードがある。私は2016年8月に社長に就任したが、当初は商用ビザで日本に入国・滞在していた。17年初めにはシャープの業績がある程度回復し、私の経営再建策が成果を挙げてきたこともメディアで評価を受け始めた。

 そのまま商用ビザで長期滞在していては、日本の入国管理当局からあらぬ誤解を招き、シャープの名誉も傷つけかねない。そこで、在留カードの取得を申請することを決め、事務の担当者に手続きを依頼した。

 ところが、窓口で「日本で収入がなく、納税実績もない」という理由で申請の受付を断られてしまったのだ。私はシャープの再建のために無給で働いていたのだが、在留カードの取得を断られるとは正直なところ驚いた。

 その後、ある方の口利きにより、在留カードは無事に発行された。今となっては笑い話だが、柔軟な対応をしてくれた日本政府には感謝申し上げたい。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00461/042400079/