「全てOK」「それでは困る」

ゲーム配信を認めるか否か。23年3月、文化庁などが主催したオンラインセミナーで、ゲームソフトの開発を手掛ける「サイバーコネクトツー」(福岡市)の代表取締役、松山洋さんと、「428 封鎖された渋谷で」などのヒットで知られるゲームクリエイター、イシイジロウさんが、是非について意見を交わす一幕があった。

松山さんは「自社作品であれば、ゲーム配信も収益化もすべてOK」との立場。
「われわれは完成したゲームを1人でも多くの人に届けるため、大金を掛けて世界中にプロモーション(宣伝)する。それでも、発売後何カ月もたって『あのゲームもう出てたんだ』と言われてしまうのが宣伝の世界だ」と説明した上で、
「広告収益という下心があっても、動画配信によって宣伝を手助けしてくれるのであれば大歓迎。個人的意見だが、『ネタバレ』をしてもらった方が多くの人に伝わると感じている」と語った。

これに対し、イシイさんは「多くの人が実況を楽しんでいるので、全部OKと言えば受けがいいが、『それでは困る』という立場もある」と反論した。
これまでイシイさんが手掛けてきたゲームの多くは、ボタンを押してストーリーを読み進める「ビジュアルノベル」と呼ばれるもの。
「実況などで物語の核心を明かされてしまうと、視聴者の購入意欲が大きくそがれてしまう。どれも同じゲームだとまとめてしまわず、ジャンルごとに丁寧に考えていただけたら」と訴えた。

◆境目にあるものは

国内では、映画を10分程度に無断編集して結末を明かすファスト映画や、漫画やアニメを無断公開する海賊版サイト、セリフを丸ごと書き写したネタバレサイトなどが相次いで刑事事件化している。
こうした違法コンテンツの摘発に携わってきた中島弁護士に、違法配信とそうではない動画の境目がどこにあるのかを聞いた。

中島弁護士はまず、「ゲームのオープニングやエンディング、ムービーシーンといった映像部分は、著作権法上『映画の著作物』として扱われる」と説明。
それらをつなぎ合わせただけの動画や、投稿者の実況やプレー技術といった創作性が反映されていないものについては、配信に理解を示す企業でも禁止していることが多いという。
「ファスト映画とほとんど同じ。巨額の賠償金を請求される恐れもある」と警告した。

ネタバレについては、「例えば、重要シーンの内容について短い言葉で明かすだけなら著作権侵害にはならないが、ゲームの映像を使う場合は別。見た人の購入意欲がそがれることもあるため、動画のタイトルに『ネタバレあり』と明記するなど、企業側の示したガイドラインをきちんと守る必要がある」と指摘した。

ゲームと切っても切れない存在にまで成長した動画配信。
ゲーム文化を盛り上げる動画とは、どんなものなのだろう。自身も熱心なゲーマーという中島弁護士は「法律やガイドラインをきちんと守るだけでなく、そのゲームに対する『愛』のある動画を配信してほしい」と力を込めた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3e899412f9c71cea6797dfec2629515436e34a05?page=2