心と体の性に違和感がある人たちに対する差別は許されないが、現在議論されている法案は、課題が多すぎる。慎重な検討が不可欠だ。

 自民党の一部議員が、性的少数者(LGBT)への理解を深めるためだとして、理解増進法案の国会提出を目指している。

 法案は、LGBTに関する施策を推進するため、政府が基本計画を作り、毎年、その実施状況を公表することを国に義務づけている。
企業や学校に対しても、必要な対策の実施を求めるという。

 しかし、理解増進法案は、どのような行為が差別にあたるかを明示しておらず、肝心の対策も、今後の検討に委ねている。

 具体策を曖昧にしたまま法整備を急げば、法律の趣旨を逸脱した過剰な主張や要求が横行し、社会の混乱を招く恐れがある。

 例えば、出生時の性は男性で、自認する性は女性というトランスジェンダーの人が、女性用のトイレを使いたいと主張した場合、どうするのか。
スポーツ競技で、トランスジェンダーが女性の種目に出場することを認めるのか。

 トランスジェンダーにこうした権利を認めることになれば、女性の権利が侵害されかねない。

 多様性を認めるためだとして、安易に法整備を図ることは慎むべきだ。
「これも差別だ」「あれも差別だ」といった過激な主張に振り回される可能性もある。


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https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230512-OYT1T50280/