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ステンレス溶接鋼管、輸入材が大幅増。「統計整備」の課題認識浮上・HSコード細分化求める声も

 ステンレス溶接鋼管の輸入量が2021年下期以降過去最高の水準に達し、国内市場における輸入材の浸透度が高まる中、輸入実態の把握に向けた統計整備が課題認識として浮上している。現在の財務省貿易統計のHSコード(国際統一商品分類)はニッケル系、クロム系などの鋼種区分、あるいはサイズ区分がなく、総量は把握できるものの詳細が読み取れない。各社が情報収集で実態把握に努めているのが実情で、貿易統計のHSコードの細分化を求める声が一部メーカー、流通から挙がり始めている。

 ステンレス溶接鋼管の輸入は今年に入って低下しているが、暦年ベースでは17年(1万2千トン強)に初めて1万トンを超え、21、22年と過去最高を更新し、22年は1万7千トン弱に達した。一方で、国内メーカーの国内向け出荷は19年から低下し、20、21年と低調が続き、22年はさらに減少した。市中では「ここ数年の国内材の減少の7割程度は需要数量減に起因し、3割程度は輸入増の影響によるのではないか」と受け止める向きがある。
 22年のステンレス溶接鋼管輸入の国別構成は韓国と台湾がそれぞれ3割程度で、タイを含む3カ国でほぼ8割を占める。インドネシア、中国も増え、この2カ国合計は十数%。タイからの輸入は日本冶金工業グループの生産分担によるもので、従来から安定している。存在感を増しているのは韓国、台湾の現地メーカー材だ。
 ステンレス鋼の統計整備をめぐる動きでは過去に冷延鋼板類を中心とした鋼板類の整備が進んだ実績がある。通商措置を遠景にした取り組みで05年に鋼種区分を導入し、07年に一部の鋼種区分を見直し、20年に日本工業規格に合わせた鋼種区分定義への変更も行い、より正確な情報把握ができるようになった。
 鋼板類、特に冷延鋼板類のHSコードはサイズ・鋼種別に詳細に分かれており、溶接鋼管で同様の細分化を目指すのは現実的ではないが、「せめてニッケル系かクロム系かそれ以外かを判別できれば」と頭を悩ます市場関係者は少なくない。
 国内市場では国内材と輸入材の二重価格構造が顕在化しているが、現在の貿易統計では鋼種別の大まかな価格動向も判別できない。ステンレス鋼は合金成分の違いで価格水準が大きく異なり、現状ではニッケル分の高い鋼種が入着した月の平均単価が跳ね上がる場合もある。
 輸入材の存在感が増し、さまざまの角度から市場の健全化や持続性に向けた検証が必要となるなかで、貿易統計の整備も不可欠なものとなりそうだ。