防弾チョッキは米国も逮捕時のみ 「常時」は非現実的

長野県中野市で男が猟銃を発砲するなどし、警察官らが死亡した事件。通報を受けて現場に最初に駆け付ける交番勤務などの地域警察官は、凶器を持った犯人に対峙(たいじ)する危険性が高い。警察は安全確保のための対策を進めているが、今回の事件のように突然、銃で襲われるケースなどでは対処が難しいのが現実だ。

長野県警によると、死亡した玉井良樹警部補と池内卓夫巡査部長は25日午後4時25分ごろ、「男が女性を刺した」との110番通報を受け、中野市江部の現場に急行。2人は青木政憲(まさのり)容疑者から猟銃で撃たれ、死亡した。この際、2人は防弾チョッキを着用していなかった。

警察庁によると、地域警察官は刃物から身を守る耐刃防護服(防刃チョッキ)は常時、着用しているが、防弾チョッキについては銃器を持っていることが明らかな場合に着用する。今回の事件では当初、「女性がナイフで刺された」との通報で、青木容疑者の銃器の所持は不明だった。

警察庁は平成30年6月に富山市で、同年9月に仙台市で、それぞれ交番の警察官が襲われた事件が相次いだことを受け、全国の警察本部に対し、地域警察官の安全策の強化を指示。奪われにくい新型拳銃入れの配備を進めるなどしてきた。

一方、公共政策調査会研究センター長の板橋功氏は「銃器犯罪が頻繁にある米国などと違い、日本では銃器が使われる犯罪は少なく、警察官全員が動きの制限される防弾チョッキを付けるのは現実的ではない」と指摘する。銃社会の米国でも、逮捕などの強制措置を取る際は防弾ベストを着用しなければならないが、他のケースでは、刑事の判断に任されているという。

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