NHKが、インターネット配信できる番組の範囲を定めた規則に反して、動画配信サービス「NHKプラス」にBS番組も加えようと、2023年度予算に設備費用約9億円を盛り込んでいたことが29日分かった。予算が国会で承認された後に発覚し、白紙に戻されたが、公共放送のネット業務拡大の是非が議論される中、NHKは、ガバナンス(組織統治)の観点から再発防止策を講じることになった。

放送法では、NHKの本来業務は放送とされ、テレビ所有者に契約義務を課す受信料を主な財源としている。そのため、ネット配信は放送を補完する任意業務とされる。総務相が認可する規則「インターネット活用業務実施基準」で、NHKが配信できる番組の放送波を定めており、この中にBSは含まれていない。

NHKプラスは、受信契約者向けの無料サービスで、番組の同時配信と見逃し配信を行っている。実施基準の規定では、総合とEテレの番組は配信できるが、BS番組も配信するなら実施基準の変更が必要だ。

 ところが、関係者によると、前田晃伸前会長時代の昨年12月、NHKプラスで24年4月からBS番組の同時配信を開始する方針で設備の購入案が浮上。一部の役員に 稟議りんぎ 書が回り、実施基準変更に関する議論がないまま決済された。その結果、約9億円が23年度予算に盛り込まれ、3月に国会で承認された。その後、問題に気付いた稲葉延雄会長らは、稟議書を決済した当時の役員から経緯を聴取すると共に、BS番組配信は実施基準違反となるため、撤回した。

 ただ、実施基準には、今後の放送予定番組の中で特に周知・広報が必要なものは配信できる旨の記載があり、今回の予算は、12月から始まる新BSの宣伝などの範囲内で使うという。

 NHKのネット業務の範囲については、昨年9月から、有識者による総務省の作業部会で議論が続いているが、結論は出ていない。NHKは今月16日の経営委員会に経緯を報告。総務省にも説明しており、ガバナンスのあり方を検証する外部の作業チームを発足させる方針だ。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/tv/20230529-OYT1T50141/