英語信仰は「壮大なムダ」、言語学者の危惧 「日本語こそ国際語」

 学校での英語学習の早期化が進み、社会人でも英語を学ぶ人は多くいます。ですが、青山学院大学の永井忠孝教授(言語学)は、そうした風潮に疑問を感じると言います。「英語の害毒」(新潮新書)という著書もあり、「ある意味、日本語が一番の国際語だ」と語る永井氏に話を聞きました。

 ――すぐに仕事で使うわけでなくても英語を学ぶ人は多く、学習熱が高まっているように感じます。

 「まるで強迫観念のようです。私は外国語を学ぶ必要がないとは思っていません。ただ、いまのありようは、国を挙げて壮大なムダをやっているように感じます。仕事で使う英会話は、中学と高校で学んだ読み書きの基礎があれば、わりとすぐになんとかなります。仕事で実際に必要になってから勉強すればいいのです。一度落ち着いて、本当にいま英語を勉強することが必要なのか、冷静に自分に問いかけた方がいいと思います」

 「英語に時間を割くということは、他の必要なことを学ぶ時間が減るということです。英語も大事ですが、国語も数学も歴史も大事です。仕事で必要なことも英語だけではないでしょう。そこまで考えて、てんびんにかけて決めるならいいですが、英語習得のいい側面しか言わない英語産業やメディアに、あおられている面もあるのではないでしょうか。英語を特別視しすぎているように感じます」

 ――子どもの教育のために海外に移住する人もいますね。

 「子どものときの海外移住は、真の意味で英語が身につくケースもあり、そうすれば武器になりえます。ただ、そう簡単な道ではないことは、事前にちゃんと理解しておく必要があります」

https://www.asahi.com/articles/ASR684C98R5PPLFA002.html