菊のおひたし美味しいよね


刺身の黄色い花 じつは“タンポポ”じゃない そもそも何のため? 「散らすのが粋」と食文化専門家(ラジトピ ラジオ関西トピックス)
https://news.yahoo.co.jp/articles/4318a83f728ce420ab012e4fb4b052fd86733a6c

刺身の盛り合わせに彩りを加える飾り花、通称「刺身タンポポ」。スーパーで売られている刺身のパックにも添えられていることがありますが、何のために添えられていて一体どのように食べるのが正しいのでしょうか。江戸時代の食文化について詳しい車浮代さんに聞きました。

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そもそも刺身に添えられているのはタンポポではありません。正しくは「食用菊」であり、その名前の通り食べることができます。その食用菊について、浮代さんによると、その歴史は奈良時代まで遡るとのこと。

「観賞用の菊は中国から奈良時代に渡来しました。そこから食用に品種改良され、一部の貴族の間では食されていたとされています。食用菊が庶民にまで広がったのが江戸時代のことで、その頃には刺身の薬味として使用されていました」(浮代さん)

薬味として食用菊が使用されていたのは、冷蔵技術が発達していなかった時代に菊に含まれる成分に「殺菌作用」があると見込まれていたそう。

「魚の刺身自体は鎌倉時代からすでに食されていました。江戸時代になると食用菊をそのまま添えるのではなく、大根おろしや他の薬味とともに、花びらをまとめて大量に盛り付け、刺身の薬味として彩りを加え、同時に食中毒を予防させていたようです。」(浮代さん)

では実際に刺身に添えられた菊の花は、どのように食べれば良いのでしょうか? 浮代さんによると「花びらをちぎって刺身に散らせるか、または醤油に入れて味や彩りを楽しむ……という食べ方が粋とされています」とのこと。そんな食べ方があったとはこれまで誰からも教わったことのない筆者。意外に感じつつも、日本人らしい“機能美”を大切にする感覚がいにしえから存在していたのです。

食用菊は刺身以外にも、花びらを散らせた「菊のちらし寿司」などの料理に使われることがあると浮代さんは言います。

「無病息災を願う9月9日の『重陽の節句』は“菊の節句”とも呼ばれています。菊の香りには邪気をはらい寿命を延ばす力があると信じられることから、花びらを浮かべた“菊酒”を飲むといった風習もあります」(浮代さん)

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言うまでも無いですが、食用菊に見立てたプラスチックの花はあくまで彩り専用なので食べることはできません。また、漢方学では「菊は体を冷やす」とも言われていることから、一度に大量摂取するのは注意と浮代さんは締めくくっていました。

(取材・文=宮田智也)