「もう何も描きたくない」と思った──『ハコヅメ』の泰三子が語る、新連載が8ヵ月遅れた理由
特別企画 インタビュー
『ハコヅメ』の泰三子による新連載『だんドーン』がスタートした。日本の近代警察を作った男・川路利良の目を通して幕末から明治を描いていく。
この記事は、いわゆる“新連載開始にあたっての著者インタビュー”ではない。昨年10月から連載開始予定だった『だんドーン』がおよそ8ヵ月遅れた理由を、著者の泰が自らの言葉で語りたい、と提案して生まれた記事だ。
理由となった突然の悲しい出来事について、家族について、日々の生活について、気持ちの変化について──泰がどこまでも正直に、正確に言葉にしていくうちに、作家としての姿勢、また本作にかける熱い思いが見えてくる。
(取材・文 門倉紫麻)
「連載開始が遅れた理由について説明する場を持たせていただきたいです、と私から編集部にお願いしました」
この記事は、『だんドーン』の内容や描くきっかけを語る、いわゆる新連載インタビューではない、という泰の強い気持ちが伝わってくる言葉。当初予定していた連載開始時期である昨年10月から8ヵ月遅れで『だんドーン』は始まった。
泰が話したいと思っていたその「理由」は、「夫が突然亡くなってしまった」から。
「開始号も決まっていたので『表紙はどうしようか』と編集さんたちと話していたところでした。夫が亡くなってすぐに編集さんとチーフスタッフに連載をどうするか相談したんですが、お2人とも電話口で『仕事のことは考えず、泰さんとお子さんの気持ちを大事にしてください』と言ってくださって。
とてもありがたかったのですが、それを大事にしたために、読者の方にはただ待っていただいてる状態になってしまった。新連載を楽しみにしてくださっている方もいたので、ずっと申し訳ないと思っていたんです。生活が落ち着いた今、誠意を持ってお話ししたいと思いました」
夫が亡くなってからしばらくは、週刊連載を続けながら小学生の子供2人との生活を円滑に進めるための基盤づくりに、慌ただしい日々が続いた。
「夫の葬儀の翌日には中古の物件を見に行って、引っ越しを決めて。『ハコヅメ』をたくさんの人に知っていただいたことで、周囲に私が作者だと知られてしまうこともあったので……誰も私たちを知らない場所でやり直したいという気持ちもありました」
泰の夫は、家事など生活面だけでなく、漫画制作においても泰を支えてきた。
「『だんドーン』の取材旅行も一緒に行きました。もともとあまり漫画を読まない人なんですが、いつも最初にネームを見せるのは夫だったんですよ。『笑ってくれるかな……』とお皿を洗いながらチラチラ夫の反応を見ていました(笑)。
『あそこで笑わないということは今回のネームの出来は良くなかったんだ……』と思ったりして。『ハコヅメ』で一番気をつけていたのが、傷つく人がいないか、ということだったのですが、夫は『この“事件処理”っていう言い方は“事件捜査”にしたほうがいい。処理だと被害者の方にも、捜査している警察官にも失礼だと思う』と指摘してくれたりしましたね」
以下全文ソース(長い)
https://comic-days.com/blog/entry/interview/20230615
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