北方領土の周辺水域で行う日本漁船の「安全操業」が今年、出漁できずにいる。ロシア側が1月、日露の政府間協議に応じないと一方的に拒否してきたためだ。ロシア側のトロール船による乱獲なども懸念されており、漁業者からは、「根室海峡の水産資源が枯渇してしまう」との懸念の声も聞かれる。早期の協議再開に期待を寄せるが、先行きは不透明だ。(石原健治)

|| 重要な経済問題

安全操業の海図
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 安全操業は、日露両政府が、銃撃や 拿捕だほ をされない「安全な漁」を目的として1997年に合意し、98年10月のホッケ漁でスタート。99年1月にスケトウダラ漁も始まった。

 政府間協議と、同時に行う民間交渉で漁獲量枠を決め、日本側がロシア側に協力金を払う仕組み。

 水産庁によると、2022年の漁獲量枠はスケトウダラ(漁期1月1日~3月15日)955トン、ホッケ(9月16日~12月31日)777トン、タコ(1月1日~1月31日、10月16日~12月31日)213トン、その他232トンだった。

 22年の政府間協議や民間交渉は21年内に終了した。だが、ロシアのウクライナ侵略で日露関係が悪化したため、今年に向けた協議は1月、ロシア外務省が、一方的に応じないと連絡して途絶えた状態だ。

 現状について、北海道羅臼町の羅臼安全操業協議会会長で、スケトウダラとホッケの刺し網漁を予定する船長の野圭司さん(60)は、「水産資源が枯渇しかねない、重要な経済問題であることを多くの国民に知ってほしい」と語る。

 所属する羅臼漁協で安全操業の準備をしているのは4船団の8隻。約1億5000万円をかけ数年前に第31吉定丸(19トン)を新造した野さんは、船団リーダーとして出漁する予定だが先の見えない状況が続く。

 ロシア国境警備局の船に監視される中、船上で集約して作業を進めるため、通常の漁船の倍近い6人が乗り込む予定だ。漁網や漁具の整備なども含めると年間約600万円はかかるとされ「最悪の場合、政府には補償を求めていく」という。

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