日本の漁業・養殖業が過去最低記録を更新した理由

 2022年度の漁業・養殖業の生産統計が発表されました。漁業と養殖の合計数量が1956年に現行調査を開始して以来、初めて400万トンを下回り、過去最低記録を更新しました。

 毎年生産量が減り続ける日本。世界全体では毎年増加しているので、世界的に見て極めて異例です。

 前年比で7.5%の減。サバ類、カツオの水揚げが前年比で大幅に減少、サンマ、スルメイカ、タコ類が前年に続き、過去最低を更新したなどと報道されています。そして減少している原因は、回遊場所が沖合に移っているなどと、海水温の上昇が原因と報道されています。

 確かに、海水温の変化は資源量に影響を与えます。しかしながら、もしそれが根本的な原因であれば、世界の他の海域でも同様に水揚げ量が減っているはずです。

 世界中の海で、日本の海の周りだけが水温が上昇しているわけではありません。さらに言えば、他の海域でも同様に魚が減っているわけではありません。


FAOの予想でわかる日本の異常性

 下の表をご覧ください。国連食糧農業機関(FAO)が、2020年比で30年の漁業・養殖業の生産量を予測した数字です。

 世界全体では、日本ではもはや当たり前になっている減少傾向どころか、13.7%の増加予想です。しかも100万トン以上の生産量がある国で、減少予想されているのはわが国だけです。その5年間での減少予測の幅は7.5%です(隣の韓国は横ばい)。

 しかもさらに悪いことに、22年時点で、20年比で8.9%減少。30年時点での7.5%減を既に前倒しして悪化しているのです。

 世界銀行は10年比で30年の生産量を予測していますが、全体では23.6%の増加予想に対し、日本だけが9%の減少予測でした。そして17年時点でその予測を前倒しして悪化を続けています。しかしこのような科学的根拠に基づいたデータは、日本で報道されることはほとんどありません。


サバがいるはずなのに獲れない理由

 サバの水揚げ量が減少し、サバ缶の原料が不足して一時休売となったり、商品が原料価格の高騰で値上げされたり、その中身についても大きなサバが減って小さなサバが使われて味が落ちたりしています。消費者にも影響が出ています。

 サバの資源量の増減には「漁業」が大きく影響しています。しかしながら、獲れない原因について、サバに限らず獲りすぎてしまった現実を避けるように分析されることが主流になっています。このため、さまざまな理屈が合わない理由が出て来て社会が混乱しています。

 21年に水産研究・教育機構はサバ類の資源評価の結果について「資源評価ピアレビュー委員会」を開き、国内外の外部研究者からの客観的な批評を受けています。サバに限らず、日本の資源評価はどう見ても漁獲量や資源量が減っているのに、逆に資源量が多い、しかも増えているといった評価が散見されます。そこでこのような外部からの評価と公表は、無謬性による弊害をなくすためにも重要なことなのです。

 その中では、米国海洋気象庁(NOAA)からさまざまな問題から誤解が生じやすいと指摘されており、「著しい改善」を求めるコメントがありました。例えば巻き網一回で何トン獲れるかの指標について、これでは魚群の大きさがわかるだけで、漁船の進歩・技術などが無視された分析であり、魚の年齢や群れの数、自然死亡率の推定、周辺国の漁獲データが足りないなどと言われています。

 日本で起きている「サバはいるはずなのに獲れない」という現象は、長年北欧でのサバ漁を研究している筆者は見たことがありません。漁獲枠が設定されている通りに獲れなかったなどということは、政治的にノルウェー漁船が漁獲海域を欧州連合(EU)から制限された(2009年・消化率64%)以外にはこれまでありません。一方で、日本では毎年、枠が大きすぎて漁獲枠通りに獲れないことが続いています。

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詳細はサイトで
https://news.yahoo.co.jp/articles/eddd426fd06e565df0b0d1c3ddabfea747571e40