新宿駅西口に、新宿西口駅、西新宿駅…違いわかる!? Aマッソ加納が「新宿駅」に取り憑かれた理由

人気お笑いコンビ・Aマッソの加納愛子さんが綴る、生まれ育った大阪での日々。
何にでもなれる気がした無敵の「あの頃」を描くエッセイの、第23回のテーマは「新宿駅」です。

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 新宿駅の全貌を掴むまでに、大げさではなく10年かかった。限りなくその可能性は低かったが、もしも早いうちに運転免許を取得し、
都内で車を乗りこなす生活をしていたならば、新宿駅の周辺と改札の方角をきちんと把握した上で、もう何年も前に我が物顔ができていたかもしれない。
いや、しかし星の数ほどあるナン番出口、数字を聞いて場所の見当をつけられるようになり、さらに涼しげな顔で友人に教えてあげられるようになるまでには、
駅の外側からのアプローチだけでは難しい。やはり10年というのは、誰にとっても必要な年月なのではないだろうか。

 上京してきた当初、これが新宿駅だということを頭の表面では理解しながらも、両目で捉えていたのは得体のしれない巨大な渦であった。
途中で立ち止まることのできない人の流れ、その動きはまるでなにかの総意のようで、到底汲み取れない、と降参した。しかし強固な若きプライドは
ひるむことを許さない。私は新宿駅を利用するたび、一切の拒絶反応を起こさずに渦の中に飛び込み、そして同化した。まわりの仲間はみんな、
口を揃えて「新宿嫌いだわ~」と言った。新宿を嫌いである感性に誇りを持っているようでもあった。「ごみごみしてるし」「騒々しいわりには、なんかね」
「みんな取り憑かれているみたいな目してない?」気持ちはよくわかった。新宿に意見を述べてしまうと、たしかにそうなるのかもしれない。なにがそうさせるのか。
新宿の成分なんてわからない。二丁目やゴールデン街から「知った口を利くな」と聞こえてくる気もする。しかし私はずっと新宿駅が好きだった。
それはきっと、把握できそうでできない、ちょうどいい片思いのような心地であったからだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/fd2ed03222e6b5c5523615d3eb21e163b2980424

新宿ダンジョン
https://i.imgur.com/dcLSbPV.jpg