一つは、ハイパーインフレの最中は人々が通貨の価値が下落しているとは思わないということだ。
本書には何度も「一マルクは一マルク」という表現が出てくる。
これは自国の通貨の価値は変わらないと信じていることを象徴している。
例えば過去を振り返る中、次のようなコメントが紹介されている。

「“ドルがまた上がる”と、みんなが言っていました。でも実際には、ドルの値はそのままで、マルクが下がっていたんです。でも、マルクが下がっているとは、なかなか思えませんでした」

ドルが上がる、物価が上がるとは皆考えるが、マルクが下がっているとは考えなかった。
それはまるで下りのエスカレーターに乗っているのに自分が降りているのではなく地面が上がっていると思うようなものだ。
実際の下り方はエスカレーターのような生やさしいものではなく急降下に近かったが。

https://note.com/daitamesue/n/n052f26238457