https://news.yahoo.co.jp/articles/5ec50da51c81769b1ac238a18983b1edd117fa15

池上彰「新聞離れ」アメリカの地方紙廃刊が招いた恐ろしい事態とは?記者がいるから権力者の不正に歯止めがかかる

「新聞は専門用語ばかりで難しい」「ニュースはネットで見るから、新聞なんていらない」など…。新聞離れが進み、新聞の読み方がわからなくなっている若者も増えています。そんななか、「新聞を読む人が減ったことで、新聞を読んでいるだけで他人に差をつけることが可能になった」と語るのはジャーナリストの池上彰さん。その池上さん「新聞の存在意義のひとつは、この『取材』にあります」と言いますが

◆新聞の存在意義は「取材」

「新聞を読んだほうがいいよ」とすすめると、こんな声が聞こえてきそうです。

「ニュースはネットで見るから、新聞なんていらない」
「TikTokで情報を得ているよ」 

確かに、今どき、どの新聞にもネット版があり、そこでは多くの記事が無料で公開されています。

「Yahoo!」などのポータルサイトにも、注目度の高いニュースが随時掲載されています。

ニュースをまとめて読める便利なアプリをスマートフォンにインストールしてある人も多いでしょう。

朝のニュース番組やワイドショーでは、新聞各紙の紙面をずらりと並べて、記事を紹介することもあります。

自分で新聞を購読することなく、毎日、新聞の中身をざっくり知ることができます。

しかし、だからといって、「新聞なんていらない」「新聞社なんていらない」ということにはなりません。

ニュースは記者が取材し、記事を執筆して初めて生まれます。

新聞社は多くの記者を抱え、直接情報源に取材して、記事にします。

この第一報がなければ、ネットに記事が転載されることもありません。

新聞の存在意義のひとつは、この「取材」にあります。

『新聞は考える武器になる池上流新聞の読み方』(著:池上彰/祥伝社)

◆ネットもテレビも、ネタ元は新聞

長い時間と手間のかかる取材をする記者がいるからこそ、記事が出来上がるのです。

テレビ局では、NHKだけが多くの記者を抱えています。民放テレビには報道部がありますが、記者の数は少ないのです。

そもそも民放のワイドショーは、報道とは別の部署が制作しています。自分たちで取材するのではなく、新聞で面白そうなネタを探すのです。

週刊誌や雑誌も、まったく新しいネタを発掘し、一から取材することは、あまりありません。そのような時間もコストもかけられないのです。

そこで、新聞に載った第一報をもとに、後追い取材をします。その結果、新聞以上に面白いネタが発掘されることもあります。

もし本当に新聞がなくなったら、第一報がなくなり、ネットメディアには転載するニュースがなくなってしまいます。テレビ局のネタも枯渇します。テレビを見て記事にしているネットニュースも、困ってしまうでしょう。