生活保護の受給者、疑わしき人をAIがリスト化 倫理的な問題は?
オランダ・ロッテルダム=玉川透
2023/7/3 13:00
スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演のSF映画『マイノリティ・リポート』(2002年)を見たのは、もう20年以上前のことだ。犯罪が多発し、多くの人が殺される近未来の米国。しかし、とある新システムが開発されたことで、殺人発生率が0%になる――。
当時は、まだ若かったトム・クルーズの圧倒的な存在感が目に焼き付いて、ストーリーはうろ覚えだった。でも、いま見直すと、まったくの絵空事とは思えなかった。そんな未来を予感させる事件が、実際に欧州で起きていたからだ。
オランダ第2の都市ロッテルダムは、170以上の国・地域から移民を受け入れている多国籍都市だ。60万人以上が暮らすこの街では今、約3万人が生活保護を受給している。
21歳以上の単身者は月約1195ユーロ(約18万円)、夫婦なら月約1708ユーロ(約25万円)など年齢や家族構成によって支給額は変わる。収入を隠したり、家族構成を偽ったりする「不正受給者」をあぶり出すため、市当局は毎年、最大約6千人の「疑わしい人」をリストアップし、面接してきた。
何らかの形で一定数の受給者をピックアップし、確認することは多くの自治体で行われているが、ロッテルダム市はその「切り札」として、外資系コンサルティング大手と共同でAI(人工知能)システムを開発した。だが17年には試験的に導入していたのに、そのことを公にしていなかった。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR733WB6R73UHBI011.html?iref=sp_new_news_list_n